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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/07/01

通院は継続中、でも“そろそろ限界かも”――支えとしての訪問診療導入

基本情報
年齢・性別:91歳・女性
居住地:名古屋市中区
家族構成:本人と長男の二人暮らし(キーパーソン:長男)。市内に次男夫婦も在住。
保険・制度情報:後期高齢者医療(1割負担)、要介護3(1割負担)


導入の背景
長年、大学病院で巨細胞性動脈炎やリウマチ性多発筋痛症の治療を継続していたが、圧迫骨折や神経痛による動作の不安定さが目立ち、外出自体が徐々に負担となっていた。
定期通院は継続する意向があったものの、日常的な健康管理や体調変化への対応には限界を感じるように。
「何かあったときは大学病院で対応してほしい」という本人・家族の希望をふまえ、訪問診療は“日常の見守りと支え”という補完的な役割として導入された。


介入内容と経過
定期的な訪問診療を行いながら、痛みや炎症コントロールのための注射対応や内服薬の調整を実施。
また、大学病院との診療希望が出た際には、タイムリーな紹介状の手配や診療情報提供を行い、主治医との連携がスムーズに行えるよう支援。
介入後しばらくは安定した在宅療養が継続していたが、転倒による入院を契機に在宅復帰が困難となり、施設入所へと支援の場が切り替えられた。
これまでの訪問診療の介入があったことで、入退院時の情報共有や医療的対応も円滑に移行できた。


支援のポイント

  • 通院可能なうちから訪問診療を導入し、在宅生活の“ゆらぎ”に備えた支援体制を構築

  • 本人の主治医(大学病院)との関係を尊重しつつ、情報共有や紹介状作成などで連携を補完

  • 動作不安定・痛みに波のある状況に応じ、柔軟な訪問頻度の調整やタイムリーな医療対応を実施


考察
この事例は、「完全に通院が困難になってから」ではなく、「通院はできるが、体調のゆらぎが目立つ段階」で訪問診療を導入することの意義を示している。
医療機関との併用や主治医との役割分担を明確にしつつ、日常を支える存在として在宅医療を位置づけることで、本人・家族にとっての安心と選択肢の幅を広げる結果となった。
訪問診療は“最終手段”ではなく、“ゆるやかな支え”として始めておくことで、次の転機に備える自然な準備となりうる。


付記情報
疾患種別:膠原病・慢性炎症疾患、整形外科系疾患、神経痛
病名:巨細胞性動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、虫垂膿瘍、腹部大動脈瘤、骨粗鬆症(圧迫骨折)、帯状疱疹後神経痛、坐骨神経痛、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症
医療処置:注射(疼痛・炎症コントロール目的)、状態に応じた訪問調整、紹介状作成
エリア:名古屋市中区
生活環境:本人と長男の二人暮らし(次男夫婦が市内在住)
医療負担割合:医療1割・介護1割
専門医介入:大学病院(膠原病内科・リウマチ科)
公費負担医療:記載なし(該当なし)
障害者手帳・認定情報:記載なし(該当なし)