在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/07/01
繰り返す体調不良と転倒の末に──認知症・二人暮らし高齢者の在宅導入例
基本情報
年齢・性別:89歳・女性
居住地:名古屋市北区
家族構成:本人と夫(当院訪問診療利用)の二人暮らし。長男は千種区在住。次男夫婦は春日井市在住で、キーパーソンは次男の妻。
保険・制度:後期高齢者医療保険(2割負担)、要介護1(1割負担)
導入の背景
腰部脊柱管狭窄症や骨粗鬆症の治療でA医療センター整形外科に通院していたほか、認知症・高血圧症・甲状腺機能低下症・便秘症などでBクリニックにもかかっていた。
2023年5月ごろより食欲不振や不眠が続き、複数の医療機関を受診するも明確な異常所見は得られず、夫の認知症による言動も影響し精神的に不安定な状態が継続していた。
その後、心身症型自律神経失調症でC病院へ入院、退院後は認知機能の著明な低下が見られ、医療的・精神的サポートの必要性が高まった。2024年2月には転倒による下顎骨骨折でD病院へ搬送され、手術後に在宅療養を希望され当院へ紹介となった。
介入内容と経過
初診時、認知機能はHDS-Rで8点と著しく低下しており、以前より内服していたドネペジルは中止。以降は服薬状況を確認しつつ、経過観察を継続。
高血圧および甲状腺機能低下症に対する内服は、アムロジピンおよびチラーヂンを維持処方とした。
夫の訪問診療も並行して実施されており、家族との情報共有や心身状態の変化への対応に努めながら、定期訪問を継続している。
支援のポイント
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認知症による服薬管理の困難さをふまえた処方設計と、生活状況に応じた柔軟な対応
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精神的落ち込みに対する傾聴的アプローチと、在宅における安心感の提供
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同居家族(夫)への対応も含めた二人暮らし高齢世帯への包括的支援
考察
本事例は、身体的疾患と精神的ストレスが複雑に絡み合う高齢女性に対し、通院継続が困難となる前に訪問診療へ切り替えることの意義を示している。
明確な急性期疾患がなくとも、生活全体に目を向けた医療的介入が本人・家族双方の安定につながることを再認識させる症例である。
付記情報
疾患種別:整形疾患、神経・精神疾患、慢性疾患
病名:腰部脊柱管狭窄症、骨粗鬆症、認知症、高血圧症、甲状腺機能低下症、便秘症
医療処置:内服管理(アムロジピン、チラーヂン)、傾聴支援
エリア:名古屋市北区
生活環境:高齢夫婦の二人暮らし(夫も訪問診療介入)
医療負担割合:医療2割・介護1割
専門医介入:整形外科・内科(通院歴あり)
公費負担医療:記載なし(該当なし)
障害者手帳・認定情報:記載なし(該当なし)