MENU

医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

「動かないだけで衰える」──高齢者を支える“生活動作”の視点

コラム2025/06/27

「動かないだけで衰える」──高齢者を支える“生活動作”の視点

「風邪で3日間寝込んだら、急に立ち上がれなくなった」
「入院から戻ったら、歩行器なしでは動けなくなった」
こうした事例は、高齢者の生活の中で決して珍しいことではありません。
人間の身体は、“動かさないだけで驚くほど早く衰える”ということをご存じでしょうか?

廃用症候群とは?

「使わないことで機能が失われる状態」を廃用症候群と呼びます。
筋肉、関節、呼吸、食欲、認知機能など、あらゆる機能が“安静”によって低下していきます。

高齢者はこの影響を特に受けやすく、わずか数日〜1週間の寝たきりでも、歩行能力が著しく落ちることがあります。
しかも、一度落ちた機能を元に戻すのは非常に困難です。

そのため、体調が落ち着いたら、できるだけ早く日常動作に戻すことが非常に重要です。

「動くこと」はリハビリだけではない

「動く」というと、筋トレやリハビリ体操を思い浮かべるかもしれません。
しかし、日常生活そのものが立派な運動です。

  • 自分で着替える
  • 食卓まで歩いて行く
  • 洗濯物をたたむ
  • ポストまで新聞を取りに行く

こうした日々の生活動作を“続けられるよう支える”ことが、介護予防の最前線にあります。

身体を動かす工夫とサポート

無理なく続けられる運動習慣を作るには、ちょっとした工夫が効果的です。

  • 時間帯を決めて取り組む(朝・昼・夕食後など)
  • テレビを見ながら足踏みや体操
  • 目的のある動作に変える(花の水やり、買い物など)
  • 一緒に取り組む人を見つける(家族、訪問スタッフなど)

さらに、訪問リハビリを活用すれば、理学療法士や作業療法士による個別の運動プログラムを、自宅で安心して受けることができます。

「動ける力」が人生の質を守る

筋力やバランス機能が保たれていれば、転倒リスクが下がるだけでなく、入浴や排泄といった基本的な生活動作の自立が保たれます。
これは、介護が必要になる時期を遅らせることにもつながります。

ご本人にとっても、ご家族にとっても、それはかけがえのない意味を持つはずです。

まとめ

高齢者ケアにおいて大切なのは、「今日できていることを、これからも続けられるように支える」視点です。
日々の何気ない動作こそが、心身の機能を維持し、将来の介護予防につながります。