コラム2025/06/25
ケアマネジャーの退職が増えている背景と、その深刻な影響とは
近年、ケアマネジャー(介護支援専門員)の退職が増加している現状に、業界内外から注目が集まっています。介護報酬の改定により基本報酬が引き上げられたにもかかわらず、ケアマネジャーの処遇改善が十分に進んでいないという事実が、厚生労働省の調査から明らかになっています。
処遇改善が進まない現場の実情
2024年度の介護報酬改定では、居宅介護支援の基本報酬や特定事業所加算の引き上げが実施されました。これは、ケアマネジャーの専門性を評価し、人材の確保と定着を図ることを目的としていました。
しかし、厚労省が2023年11月〜2024年1月にかけて実施した調査(対象:全国923事業所)では、52.7%が「処遇改善を実施していない」と回答。特に小規模事業所ほど改善が進んでいない傾向が見られました。
また、他の介護職種と比べて、ケアマネジャーの待遇差が浮き彫りになっており、これがモチベーション低下と離職の一因になっています。
シャドーワークの増加と精神的負荷
ケアマネジャーの業務には、書類作成、関係機関との連絡調整、家族への説明など、多くの「シャドーワーク」が存在します。これらは報酬には反映されにくく、結果として長時間労働やバーンアウトの原因となっています。
加えて、利用者や家族からの過剰な要求や理不尽なクレーム、いわゆる「カスハラ(カスタマーハラスメント)」も深刻化しており、精神的ストレスを抱える職員が増えています。
求められる対策と制度整備
現場では以下のような対策が求められています:
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処遇改善加算の適用範囲拡大:居宅介護支援事業所にも加算を認め、直接的な報酬改善につなげる。
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業務支援体制の強化:書類作成やIT導入による効率化、専任スタッフの配置などで、ケアマネ業務を分担・支援。
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カスハラ対策:対応マニュアルの整備や相談窓口の設置、家族への教育啓発など、精神的なサポート体制の強化。
また、ケアマネジャーの社会的役割を正当に評価するための啓発や、スキルに対するリスペクトを高める社会的なムーブメントも必要です。
ケアマネジャー不足が与える影響
人材流出が続けば、適切なケアプランの作成が困難になり、利用者の生活の質(QOL)が低下するおそれがあります。また、家族の介護負担が増加することで、介護離職や孤立といった二次的な社会問題を引き起こす可能性も否定できません。
まとめ
ケアマネジャーは、介護サービスの質を担保する“要”の存在です。その専門性や貢献に見合った待遇と働きやすい環境の整備は、業界の持続可能性を守るうえで喫緊の課題です。
これからの介護現場には、ケアマネジャーが安心して働き続けられる制度改革と、現場の声に基づいた実効性ある支援策が必要です。事業所、行政、地域が連携し、共により良い環境をつくっていくことが、今まさに求められています。