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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/06/16

独居・NPPV使用下でも在宅療養を実現した多疾患高齢者の事例

■基本情報
年齢・性別:79歳・男性
居住地:名古屋市中川区
家族構成:本人独居(キーパーソンは長女)
保険・制度:後期高齢者医療(1割)、要介護2(1割)、福祉給付金資格者証あり


■ 訪問診療導入の経緯
長年COPDをはじめとする複数の呼吸器疾患を抱え、Aクリニックから月1回の訪問診療、B病院呼吸器内科には3か月ごとの通院で管理されていた。HOT(在宅酸素療法)やNPPV(非侵襲的換気療法)を導入しながら、独居生活を継続。

2023年までの経過においても、CO₂ナルコーシスでの入退院や吸入薬のコンプライアンス不良など、病状のコントロールには困難を伴っていた。2024年3月より、当院から訪問診療を開始し、医療的ケアを安定的に在宅で提供する体制が整った。


■ 介入内容と経過
医療的対応:
HOTやNPPVによる呼吸管理に加え、トリルシティ皮下注射を含む薬剤管理を実施。吸入薬の使用状況や酸素使用に関する指導も併せて行った。

療養支援:
独居であることをふまえ、日中の支援体制(訪問看護・家族連絡)を整え、転倒リスクや機器管理の面からも多職種でフォロー。

経過:
訪問診療開始後は大きな急変もなく在宅生活を継続していたが、2025年2月に自宅内で転倒し、A病院へ緊急搬送。入院後はADL低下と環境調整の観点から在宅復帰が困難と判断され、訪問診療は終了となった。


■ 医療対応の詳細
主病・健康課題:
COPD、気管支拡張症、アレルギー性肺アスペルギルス症(PSL4mgで維持)、ステロイド糖尿病(トリルシティ・グルベス)、前立腺癌(リュープリン6か月毎)、陳旧性肺結核、RA(関節リウマチの疑い)

対応方針:
高度な呼吸管理を要するなかでも、在宅での療養継続を支える体制構築を重視。独居でも医療処置が安定的に実施できるよう、機器・薬剤・支援のバランスを調整。


■ 支援のポイント
・独居かつNPPV管理下でも、適切な支援体制があれば在宅療養は成立し得る
・医療依存度の高いケースにおいては、吸入薬や在宅機器の使い方を含めた定期的な確認と柔軟な対応が鍵
・「本人の希望」と「現実的な療養環境」の両立を図るうえで、訪問診療が果たす役割は大きい


■ 考察
この事例は、高度な医療管理が必要な独居高齢者でも、適切な支援体制と本人・家族の協力により在宅生活が成立しうることを示している。

病状の不安定さや機器管理の複雑さがあっても、「医療が家に来る」ことで、自宅での生活を諦めずに続けられる可能性が広がる。特に、介護リソースが限られる独居ケースでは、訪問診療が医療的安心を提供する“要”となり得る。


■ 付記情報
病名:COPD、気管支拡張症、アレルギー性肺アスペルギルス症、ステロイド糖尿病、前立腺癌、陳旧性肺結核、関節リウマチの疑い
生活環境:本人独居(キーパーソン:長女)
医療処置:HOT、NPPV、トリルシティ皮下注射、吸入管理、緊急入院後の診療終了
エリア:名古屋市中川区
負担割合:医療1割、介護1割