コラム2025/06/11
高齢者に多い「便秘」が招く体調不良と日常ケアのポイント
便秘は高齢者にとってよく見られる症状のひとつですが、「不快感」だけにとどまらず、身体・精神・認知機能にまで影響を及ぼす可能性があります。慢性化する前に日常的な観察と予防ケアを組み込み、生活の質を守る視点が求められます。
便秘による健康への影響
● 食欲低下・栄養不良
腸に便がたまることで、腹部膨満感や痛みが生じやすくなり、食欲が落ち、結果的に体力・免疫力の低下につながります。フレイルや感染症のリスクも高まります。
● 認知機能の低下との関連
便秘によって腸内環境が悪化すると、有害物質が体内に蓄積し、血流を介して脳に影響を与える可能性が指摘されています。認知症の悪化や不穏の増悪因子となるケースもあります。
● 精神的不安・混乱の誘発
便秘が続くことで、「出ないことへの焦り」「痛みによる苛立ち」などが見られ、不穏・せん妄・夜間覚醒といった行動の変化につながることも。特に認知症のある方では注意が必要です。
便秘予防とケアの工夫
● 食物繊維と発酵食品を意識する
野菜・果物・海藻・雑穀・玄米などの水溶性食物繊維に加え、ヨーグルトや納豆などの発酵食品が腸内環境の改善に有効です。食事の個別性を踏まえた提案がポイントです。
● 水分摂取の“意図的な仕組み化”
高齢者は喉の渇きを感じにくいため、1日1.5L程度の水分摂取を意識的に支援する必要があります。朝一番のコップ1杯の水は、腸の動きを促すきっかけになります。
● 身体を動かす習慣づくり
散歩や体操、ベッド上でできる足の上げ下げ、軽度の腹部マッサージなど、無理なく継続できる運動を取り入れることが、腸の蠕動を促し、自然な排便につながります。
医療との連携が必要なケース
以下のような症状が見られる場合は、早期に医師・薬剤師との連携を図りましょう:
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数日以上排便がない
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便に血が混じる
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腹痛が強くなる
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新たな薬剤投与後に便秘が悪化した
また、市販の下剤や浣腸の常用は、腸の機能低下を招く恐れがあるため、使用には注意が必要です。
まとめ
便秘は「よくあること」と見過ごされがちですが、高齢者にとっては体調・認知・精神状態の悪化に直結しうるリスク要因です。日々の観察をもとに、以下のような支援を心がけましょう:
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食事・水分・運動の基本習慣を整える
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身体変化だけでなく、気分・行動の変化にも注目する
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必要時は医療・薬剤と連携し、過剰な対処を防ぐ
便秘ケアは「日常の小さな変化」に気づけるかどうかが鍵です。現場全体で支援視点を共有し、利用者の健やかな生活を支えていきましょう。