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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/06/11

通院継続が困難となった75歳男性|多疾患併存例における早期の在宅療養移行と看取り支援

■ 基本情報

年齢・性別:75歳・男性
居住地:名古屋市東区
家族構成:妻・次男と3人暮らし。長男は名古屋市中村区在住。次男は不規則勤務のため、在宅支援が難しい日もある。
保険・制度:後期高齢者医療(1割負担)、要介護3(1割負担)

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■ 訪問診療導入の経緯

食道がん術後を含む複数の慢性疾患(COPD、心不全、心房細動、大腸憩室出血など)を抱えながら外来通院を継続していたが、ある日下血により緊急入院となった。
保存的治療により退院したものの、退院後はADLが大きく低下し、外来通院の継続が困難となった。
在宅療養への切り替えについてご家族と相談を重ねた結果、「無理に通院を続けるよりも、自宅で穏やかに過ごしたい」という本人の意向を尊重し、訪問診療の導入に至った。

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■ 介入内容と経過

医療的対応:病状の変動に応じて訪問頻度を調整し、「無理のない生活」を重視した診療体制を構築。血液検査、心電図、超音波検査などを在宅で適宜実施し、急性増悪の早期発見に努めた。
服薬管理:本人と家族の負担を最小限に抑えるため、必要最低限の内服薬に絞った処方を継続。
家族支援:在宅での看護・介護体制が安定するよう、定期的な状況確認と調整を実施した。

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■ 医療対応の詳細

主病・健康課題:食道がん術後、COPD(肺気腫)、心房細動、心不全、肺アスペルギルス症の疑い、大腸憩室出血
対応方針:通院困難に応じた訪問診療体制の構築と、生活に過度な医療負担をかけない治療設計。
最終経過:最終的には食事摂取が困難となり、当院へ入院。延命処置を希望せず、ご家族に見守られながら穏やかに逝去された。

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■ 支援のポイント

通院困難の早期判断と在宅移行のタイミング
 外来がぎりぎり成立している段階での在宅医療導入により、生活の移行が円滑に進み、本人・家族双方の負担が軽減された。
過度な医療介入を避けた支援体制
 本人の意向に合わせ、検査・処方・訪問頻度などを柔軟に調整し、生活のリズムを優先した医療対応を実施した。
終末期支援の体制整備と看取り対応
 在宅医療を通じて日々の変化を確認しつつ、入院後も最小限の介入で穏やかな看取りを支援した。

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■ 考察

本事例は、外来通院が困難となる前段階で在宅医療に切り替えることが、本人・家族の負担軽減と希望の実現に大きく寄与することを示している。
特に、複数疾患を有する高齢者においては、無理のない生活を前提とした医療設計が重要であり、その視点を持つことで「自宅でその人らしく暮らす」選択肢が現実のものとなる。
訪問診療は、単に医療を届ける手段ではなく、生活の質と最期の時間のあり方を支える「暮らしの支援」であるという役割を再確認させられる症例である。

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■ 付記情報

病名:食道がん術後、COPD(肺気腫)、心房細動、心不全、大腸憩室出血、肺アスペルギルス症の疑い
生活環境:妻・次男との3人暮らし(次男は不規則勤務)
医療処置:在宅検査(採血・心電図・エコー)、服薬管理、終末期看取り対応
エリア:名古屋市東区
負担割合:医療1割・介護1割