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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/06/09

腰痛・ADL低下を伴う75歳男性|在宅から特養入所への橋渡しとして訪問診療を活用した事例

■ 基本情報

  • 年齢・性別:75歳・男性

  • 居住地:名古屋市名東区

  • 家族構成:妻と同居。長女(豊明市在住)、次女(日進市在住)

  • 保険・制度:後期高齢者医療保険(2割負担)、介護保険申請後に要介護4(1割負担)、身体障害者手帳所持、福祉給付金あり


■ 導入の背景

約半年前に転倒し、腰部の疼痛とともにADLが徐々に低下した。当初は近隣のTクリニックに通院していたが、ここ半年は受診歴がなく、訪問診療導入直前の2週間はトイレへの移動も困難な状況であった。
膝の筋力低下により立ち上がりや移動動作が自立できず、左手には火傷、左足には褥瘡がみられたため、当院にて処置を実施。こうした複合的な身体状況および通院困難を踏まえ、2024年4月より訪問診療を導入するに至った。


■ 介入内容と経過

初回診療時より、ご家族から施設入所の希望が明確に示されていたため、介護保険の新規申請を速やかに進めた。要介護4の認定を取得し、特別養護老人ホームへの入所が決定。在宅から施設へのスムーズな移行支援を目的とした訪問診療であり、入所決定をもって医療介入は終了した。
結果として、在宅療養が困難となった患者に対し、短期間ながらも安心できる生活支援を提供し、次のステージへの橋渡しを担う形となった。


■ 医療対応の詳細

主な症状・課題 対応内容
腰痛・筋力低下 疼痛コントロールおよび移動補助の指導を実施
左手の火傷 ガーゼ保護にて処置し、経過良好にて治癒確認
左足の褥瘡 創部管理と体位調整により、改善傾向を確認

■ 支援のポイント

  • 疼痛管理と初期対応の迅速さ
     ADLの大幅な低下により通院が困難であった状況に対し、速やかに訪問診療を導入し、疼痛コントロールおよび初期対応を実施することで、身体的苦痛の軽減を図った。

  • 施設入所を見据えた家族連携と支援展開
     介護保険の申請から施設入所までを一貫して支援。家族との密な情報共有により、申請タイミングを逃さず、スムーズな移行が実現された。

  • 小外傷や褥瘡に対する早期対応
     訪問診療下において、火傷および褥瘡といった日常生活で生じる軽度外傷に迅速に対応。重症化を防ぎつつ、在宅生活の安全性を高めることができた。


■ 考察

本事例は、在宅療養が限界に近い高齢者に対して、施設入所までの一時的な医療的支援を提供した例である。
訪問診療は「ずっと在宅」のみを支えるのではなく、施設入所や看取りなど次のステージへの“移行支援”としての役割も担いうることを示している。
本人・家族の希望を実現するうえで、医療と介護が連携しながら短期的に機能する支援体制の重要性が再確認された。