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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/06/09

うつ病・整形外科疾患を有する52歳独居男性|精神的・身体的支援を目的とした訪問診療の継続支援事例

■ 基本情報

  • 年齢・性別:52歳・男性

  • 居住地:名古屋市熱田区

  • 家族構成:独居

  • 保険・制度:生活保護受給中、障害福祉サービス利用中。介護保険は未申請。身体障害者手帳(肢体不自由)および特別障害者手当の申請を希望している。


■ 導入の背景

本人より訪問診療の希望があり、精神的および身体的な継続支援を目的として介入を開始した。複数の疾患と障害を有し、外来通院が困難であったことから、生活の質(QOL)を維持する観点からも、在宅での一貫した支援の必要性が高いと判断された。


■ 介入内容と経過

訪問診療開始以降、うつ症状に対して定期的な対話を通じたメンタルサポートを継続している。身体症状については、服薬調整・疼痛評価・生活指導を組み合わせた対応を行っている。
あわせて、本人の希望に基づき、身体障害者手帳および特別障害者手当の申請支援、通院手段の確保、行政担当者との調整を通じた制度利用支援など、医療・福祉・行政の連携を図りながら包括的な支援を継続している。


■ 医療対応の詳細

  • 主な疾患・病歴:うつ病、腰椎椎間板症、十二指腸潰瘍、左大腿骨顆上骨折(自殺未遂)、変形性膝関節症、高血圧、不眠症

  • 主な症状:便秘(10年持続)、左手のしびれ・麻痺、手の震え、慢性腰痛、左足にボルト留置あり

  • 精神的ケア:うつ症状に対しては、みなみメンタルクリニックへの通院を継続しており、代理受診も実施。訪問診療時には対話を重視し、心理的安定を図っている。

  • 身体的ケア:整形外科と連携し、鎮痛薬の調整と体操指導による腰部負担軽減を実施。左手の震え・しびれについてはジスキネジアを疑い、経過観察中。必要に応じてリハビリ導入を検討している。

  • 通院支援:タクシーを利用し、67歳の友人が通院に付き添っている。福祉事務所と連携し、移動手段や住環境の整備、社会制度の申請準備を進めている。


■ 支援のポイント

  • 精神的安定の確保:訪問時の対話支援を中心に、継続的なメンタルサポートを提供している。

  • 疼痛管理と症状把握:慢性疼痛に対しては薬剤調整と経過観察を徹底し、生活への影響を軽減している。

  • 生活自立支援:日常生活動作(ADL)の維持に向け、動作指導や支援計画を個別に調整している。

  • 行政・制度連携:生活保護担当者や福祉窓口との連絡体制を確保し、必要な制度利用を円滑に進めている。


■ 考察

本事例は、精神疾患と整形外科的疾患を併発し、生活支援が必要な独居の若年生活保護受給者に対し、医療・福祉・行政が連携して継続的支援を行っているケースである。
特に、精神的安定と疼痛緩和は生活の質に直結する要素であり、在宅支援においても重点的に対応が求められる。また、制度利用の支援を通じて、生活基盤の安定化を図る取り組みは、今後の長期的支援の土台となる。社会的孤立を防ぐ観点からも、支援の継続が重要であると考える。