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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅医療の事例紹介(個人宅)2025/06/03

訪問診療から入院看取りへつながったケース

基本情報
年齢・性別:93歳・女性
居住地:名古屋市東区
家族構成:本人は独居。キーパーソンは名古屋市北区在住の長女。

保険・福祉情報
医療保険:後期高齢者医療保険(1割負担)
介護保険:要介護2(1割負担)
福祉給付金あり

導入の背景
慢性腎疾患の既往をもち、以前より入院歴があった。両眼に先天性の弱視を抱えており、視覚的な援助が必要な状況ではあったが、難聴はなく、日常的な会話には支障がなかった。加齢とともにADLが低下し、外来通院が困難となったため、訪問診療を導入。以降、自宅での療養生活がスタートした。

介入内容と経過
訪問診療開始後は、会話の成立や生活リズムも安定しており、自宅療養が継続できていた。しかし、ある時期を境に経口・水分摂取が著しく低下し、緊急往診を実施。その際、ご家族との話し合いのもと、入院による加療が最適と判断され、入院へと切り替えた。入院中は点滴管理などの支持療法が行われたが、状態は回復せず、穏やかに最期を迎えられた。

医療対応の詳細
主病:認知症、低ナトリウム血症、帯状疱疹後神経痛、誤嚥性肺炎の既往、骨粗鬆症
医療処置:訪問診療中は特別な医療処置は行っていない。入院後は経口摂取困難に対する点滴などの支持療法を実施

支援のポイント

  • 通院困難への対応:ADLの低下を受け、訪問診療を導入し、自宅療養を可能にした
  • 家族との信頼関係:状況変化に応じた判断を、キーパーソンである長女と丁寧に相談しながら進めた
  • 医療的判断の柔軟性:在宅療養から入院加療へと、状態に応じたシームレスな切り替えを実現
  • 本人の尊厳に配慮したケア:過度な延命措置ではなく、自然な経過を見守る支援に終始した

考察
本事例は、訪問診療によって自宅での生活を一時的に支えつつも、状態悪化時には速やかに入院対応へと切り替え、最期を病院で迎えたケースである。本人の生活の質と家族の安心を両立させるためには、在宅医療と病院医療との連携、そして柔軟な判断が必要であることが再認識された。看取りの場が在宅か病院かにかかわらず、本人の尊厳と家族の意向を丁寧にすり合わせながら支援することが重要である。