MENU

医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

「また起きてしまう」を減らすために 高齢者の夜間排尿と眠りのケア

コラム2025/05/08

「また起きてしまう」を減らすために 高齢者の夜間排尿と眠りのケア

高齢者にとって、夜間の排尿は身体的にも精神的にも大きな負担です。
何度もトイレで目が覚めることで睡眠が妨げられ、日中の眠気やだるさ、さらには転倒のリスクが高まります。睡眠の質が低下すると、生活リズムの乱れや認知機能の悪化にもつながるため、夜間のトイレ対策は重要なケアのひとつです。

ここでは、夜間頻尿の主な原因と、睡眠の質を高めるための具体的な対策についてご紹介します。

夜間頻尿の主な原因

 膀胱機能の変化(加齢による影響)

加齢に伴い、膀胱の容量が小さくなったり、尿意を感じやすくなったりすることで、夜間の排尿回数が増える傾向があります。

 利尿作用のある薬の服用

降圧薬や利尿剤などは、夜間の尿量を増やす原因となることがあります。薬の服用時間を調整することで、夜間の排尿回数が改善する場合があります。

 前立腺肥大・過活動膀胱

特に男性では、前立腺の肥大による尿道の圧迫や、膀胱の過敏性が原因で頻繁に尿意を感じやすくなります。

 水分・カフェイン・アルコールの摂取

夕方以降の過剰な水分摂取や、カフェイン・アルコールの摂取は、利尿作用により夜間頻尿を助長する可能性があります。

日中のむくみの再吸収

下半身にたまった水分が夜間に体内へ戻り、それが尿として排泄されることで夜間頻尿につながります。

夜間のトイレ対策

 水分摂取のタイミングに注意

夕方以降は水分摂取を控えめにし、特に就寝2時間前からの摂取を避けると効果的です。カフェインやアルコールも控えましょう。

 利尿作用のある飲み物を見直す

コーヒーや緑茶、アルコールは控えめにし、白湯やカフェインレス飲料に切り替えると安心です。

就寝前に排尿を習慣化

眠る前には必ずトイレに行き、膀胱をしっかり空にすることが、睡眠中の尿意の軽減につながります。

むくみの対策を取り入れる

日中に足の血流を促すことで、夜間の尿量を減らせます。

  • 夕方に10分程度、足を高く上げる
  • 軽い足のマッサージを行う
  • ウォーキングなど軽い運動を習慣にする

トイレまでの安全な動線を確保

夜間の転倒リスクを減らすため、トイレまでの環境整備が欠かせません。

  • 通路に物を置かない
  • 足元にセンサー付きのナイトライトを設置
  • ベッド周辺やトイレ前に手すりや立ち上がり補助具を導入

睡眠の質を高める工夫

一日のリズムを一定に

毎日同じ時間に起床・就寝することで、体内時計が整い、眠りの深さも安定します。

寝る前のリラックスタイムを設ける

38〜40℃のぬるめの入浴や軽いストレッチは、副交感神経を優位にし、自然な眠気を促します。

快適な睡眠環境の整備

寝具は身体に合った硬さのものを選び、室温・湿度にも注意を。特に冬場の乾燥や夏場の暑さは睡眠を妨げる要因になります。

 昼寝は短時間にとどめる

昼間に長く眠ると、夜間の入眠や熟睡が難しくなります。昼寝は30分以内を目安にしましょう。

ケアの現場で意識したいこと

夜間頻尿は「仕方ないこと」と思われがちですが、生活習慣や環境の工夫で改善できる余地があります
水分管理・動線整備・むくみ対策・睡眠習慣の見直しなど、小さな工夫の積み重ねが、本人の睡眠の質と日中の生活の安定に直結します。

まとめ

夜間の頻繁な排尿は、高齢者の睡眠障害や転倒リスクに深く関係しています。
水分摂取の調整や就寝前の排尿習慣、トイレ環境の整備に加え、生活リズム全体を整えることで、夜間の安心と睡眠の質の向上が期待できます。

現場では、利用者の排尿パターンや睡眠状況を観察しながら、必要に応じて医師・薬剤師と連携し、生活の質(QOL)を高める支援を継続的に行っていくことが大切です。