コラム2025/04/09
誤嚥・低栄養・認知症を防ぐ高齢者ケアにおける“口腔”の視点
口腔ケアは、健康を維持するうえで欠かせない習慣のひとつです。高齢になると、口腔内の状態が全身の健康に大きく関わることがわかってきています。ケアを怠ることで、全身の疾患や栄養状態の悪化、認知機能の低下など、さまざまなリスクが生じる可能性があります。
高齢者にとっての口腔ケアの重要性と、日常で実践しやすいケアの方法をお伝えします。
口腔ケアが果たす大切な役割
1. 口腔内の清潔と全身疾患の予防
歯周病は歯茎の炎症や出血を引き起こすだけでなく、糖尿病や心疾患、脳血管障害とも関係していることが報告されています。
また、口腔内の細菌が原因となって肺炎を起こすケースもあり、特に高齢者では誤嚥性肺炎のリスクが高まります。口腔の衛生状態を保つことは、こうした疾患の予防にもつながります。
2. 咀嚼力の維持と栄養の確保
歯を失うことで咀嚼が難しくなり、結果として食事量が減り、栄養不良を招く恐れがあります。虫歯や歯周病を防ぎ、歯を健康に保つことは、しっかりと食事を楽しみ、栄養を摂るうえでとても大切です。
3. 認知機能への影響
近年の研究では、口腔環境と認知症との関連が注目されています。歯周病の進行が認知症リスクを高める可能性があるとされ、日々のケアを通じて口腔内を清潔に保つことが、脳の健康を支える一助になると考えられています。
高齢者に合った口腔ケアの方法
1. 毎日の歯磨き習慣
基本は、毎食後と就寝前の丁寧な歯磨きです。高齢になると手先の動きに不自由が出ることもあるため、電動歯ブラシの活用がおすすめです。歯だけでなく、舌や歯茎もやさしくケアするよう心がけましょう。
2. 入れ歯の清潔を保つ
入れ歯は、毎日水洗いし、専用のブラシで丁寧に磨くことが大切です。合わない入れ歯を放置すると、痛みや炎症の原因になるため、定期的に歯科医での確認を受けると安心です。
3. ケアのサポート体制
自分でのケアが難しい場合は、ご家族や介護スタッフの支援が不可欠です。食後や寝る前のタイミングで、歯磨きやうがいを一緒に行うことで、習慣化もしやすくなります。歯ブラシが使いづらい方には、口腔ケア用のウエットティッシュや洗口液なども役立ちます。
毎日の習慣が、健康な口腔環境につながる
口腔ケアは、一度にすべてを完璧に行う必要はありません。毎日少しずつ、**「できることを続ける」**ことが何よりも大切です。
また、歯科医院での定期検診を取り入れることで、虫歯や歯周病の早期発見・早期対応が可能になり、より安心して日常を過ごせるようになります。
まとめ
高齢者にとっての口腔ケアは、単なる歯の健康を守るだけでなく、栄養状態の維持・全身疾患の予防・認知機能のサポートといった、健康全体を支える重要な柱です。
毎日の歯磨きや入れ歯の手入れ、定期的な歯科受診などを通じて、清潔で快適な口腔環境を整えていきましょう。それが、安心して食べ、話し、暮らしていくための基盤となります。