MENU

医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

高齢者の栄養管理と食事の工夫~支援に活かせる基礎知識と実践ポイント~

コラム2025/03/29

高齢者の栄養管理と食事の工夫~支援に活かせる基礎知識と実践ポイント~

今回は、ケアマネジャーの皆さまに向けて、高齢者の栄養管理における基礎知識と、現場で活用できる食事の工夫についてご紹介します。

高齢者の健康を維持するためには、消化吸収機能の変化や食欲の低下といった加齢変化を踏まえた栄養支援が欠かせません。日常のケアマネジメント業務の中で、適切な栄養ケアを提案・連携できることは、在宅生活の質の向上にもつながります。


栄養管理で押さえておきたい3つの基本ポイント

① 筋力維持のための「たんぱく質」

高齢者にとって、筋肉量の維持は転倒・フレイル予防の基礎です。
たんぱく質は免疫機能にも関わるため、意識的な摂取が重要となります。

▼ 推奨食材例
・肉・魚・卵・大豆製品(豆腐・納豆・高野豆腐など)
・調理例:サーモンのムニエル、豆腐ステーキ、鶏ひき肉のそぼろ煮

※食事が細くなっている方には、**消化にやさしい調理法(煮る・蒸すなど)**を提案しましょう。


② 腸内環境を整える「食物繊維」

便秘の訴えが多い高齢者には、水溶性・不溶性のバランスを考慮した食物繊維の摂取が有効です。

▼ 推奨食材例
・野菜(にんじん、かぼちゃ)
・果物(りんご、バナナ)
・海藻類、玄米、雑穀米など

※野菜はピューレ状にしたり、果物はスムージーなどで摂取しやすく工夫を。


③ 骨折予防に「カルシウム+ビタミンD」

骨密度が低下しやすい高齢者には、骨を強く保つ栄養素の補給が不可欠です。
特に女性高齢者では骨折後のADL低下が急激であるため、日頃からの栄養支援が大切です。

▼ 推奨食材例
・カルシウム:乳製品、小魚、青菜類
・ビタミンD:鮭、卵、きのこ類

※日光浴もビタミンD合成に有効であるため、軽い散歩の声かけも効果的です。


摂取をサポートする「食事の工夫」

① 食事の回数を分ける

1回の食事量が少なくなった方には、1日4~5回に分けた補食スタイルの提案を。
おにぎり、ヨーグルト、ナッツなど、栄養価が高く手軽な軽食がおすすめです。

② 見た目と彩りで食欲を引き出す

色鮮やかな野菜やフルーツを取り入れた献立は、視覚からの食欲刺激にもつながります。
サラダやスープに彩りを加えるだけでも効果的です。

③ 食事温度に配慮

熱すぎる・冷たすぎる料理は、食欲低下の一因になります。
適温(ぬるめ〜あたたかい)を意識し、快適な摂取環境を整えましょう。


水分補給の支援も忘れずに

高齢者は喉の渇きを感じにくく、脱水や便秘のリスクが高まります。
特に夏場や発熱時、感染症流行時は注意が必要です。

▼ 支援ポイント
・お茶やスープで自然な水分摂取を促す
・ゼリー、果物ジュースなど嗜好品も活用
・排泄チェック時に水分量の観察・声かけを行う


ケアマネとして意識したい視点

  • 利用者の食事・排便・活動状況をヒアリング項目に加える

  • 栄養士・訪問看護・ヘルパーとの情報共有を密にする

  • フレイル・低栄養が疑われる場合は医療機関受診や多職種連携を推進


まとめ

高齢者の栄養管理は、疾病予防・QOL維持・在宅支援の三本柱の一つです。
ケアマネジャーとして、日々のアセスメントやモニタリングに**「食と栄養」の視点を取り入れること**は、より効果的なケアマネジメントへとつながります。

「食べられているか」ではなく、
「何を・どれくらい・どう摂っているか」まで掘り下げる支援を意識し、
その方らしい生活を支える一歩にしていきましょう。