コラム2025/03/28
誤嚥性肺炎を防ぐ「食事とケア」の工夫
今回は、高齢者に多く見られる誤嚥性肺炎を予防するための「食事」と「ケア」の工夫についてご紹介します。
誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液、胃液などが誤って気道に入り、肺に細菌が感染して発症する肺炎の一種です。
特に嚥下機能(飲み込む力)の低下や口腔内の衛生状態の悪化があると、リスクが高まります。
日々のちょっとした工夫が、大切な予防につながります。
誤嚥性肺炎の主な原因とリスク要因
① 嚥下機能の低下
加齢により、舌や喉の筋力が衰えると飲み込む力が低下し、食べ物や飲み物が気道に入りやすくなります。
② 口腔内の衛生状態の悪化
細菌が多く残った状態で誤嚥が起きると、肺に細菌が届きやすくなります。歯周病や入れ歯の汚れなどもリスクになります。
③ 免疫力の低下
年齢とともに免疫力が落ち、誤嚥によって肺に入った細菌が繁殖しやすくなります。
④ 認知症や脳卒中の影響
認知症や脳卒中の後遺症により、飲み込む力や咳反射が低下し、誤嚥を起こしやすくなります。
誤嚥性肺炎を防ぐための「食事の工夫」
① やわらかく、飲み込みやすい食品を選ぶ
のどにつまりにくく、粘度が均一でまとまりやすい食事がおすすめです。
例:とろみをつけたスープ、ゼリー状の食品など
② 一口量を少なめにする
一度に多くを口に入れると飲み込みづらくなります。
スプーン1杯程度の少量をゆっくりと口に運ぶようにしましょう。
③ 水分にはとろみをつける
サラサラした飲み物は気道に入りやすいため、とろみ剤を使って水・お茶・スープにとろみを加えると誤嚥予防になります。
④ 食事中の姿勢に注意する
椅子に座って背筋を伸ばし、やや前かがみになる姿勢が理想です。
ベッド上では、上体を30度以上起こして食事するのが望ましいです。
誤嚥性肺炎を防ぐ「ケアのポイント」
① 毎日の口腔ケアを徹底する
歯磨き、入れ歯の洗浄、舌や歯茎の清掃を習慣に。
口腔用スポンジや保湿ジェル、マウスウォッシュも活用しましょう。
② 嚥下体操を取り入れる
嚥下機能の維持・改善に役立つ体操を習慣にすると効果的です。
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あいうえお体操:「ア・イ・ウ・エ・オ」と大きく発音
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首のストレッチ:首を左右にゆっくり動かす
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舌出し体操:舌を出して上下・左右にゆっくり動かす
③ 食後30分は上体を起こしておく
食後すぐ横になると、食物や胃液が逆流しやすくなります。
食後30分は座位または半座位を保つようにしましょう。
④ 呼吸機能を高める
咳で異物をしっかり排出できることが大切です。
腹式呼吸や「吹き戻し」などの呼吸トレーニングを取り入れるのがおすすめです。
誤嚥を防ぐ具体的な取り組み(チェックリスト)
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食前に嚥下体操を行う
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飲み物にとろみをつける
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食後30分は上体を起こしておく
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毎日の口腔ケア(1日2回以上)
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適度な運動で筋力を維持する
まとめ
誤嚥性肺炎は、高齢者に多く見られる疾患ですが、食事の工夫・嚥下トレーニング・口腔ケアによって予防が可能です。
また、介護者が日々の変化に気づき、早めに対応することが何より大切です。
日々のちょっとした習慣が、大きな予防につながります。
ご本人の安心、そしてご家族や支援者の負担軽減にもつながるよう、日常のケアを見直してみましょう。