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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅でできる点滴とは? ~自宅での点滴の役割と注意点~

コラム2025/03/07

在宅でできる点滴とは? ~自宅での点滴の役割と注意点~

高齢化や医療の進歩に伴い、病院に通わずに自宅で医療を受ける「在宅医療」が注目されています。

その中でも、栄養補給や脱水症状の改善、薬剤の投与などを目的とした「在宅点滴」は、多くの患者さんやその家族にとって大きな支えとなっています。

今回は、在宅で可能な点滴の種類やメリット、注意点について解説します。

在宅でできる点滴の種類

在宅で実施される点滴は、主に以下の3種類に分類されます。

 静脈内点滴(IV点滴)

最も一般的な点滴方法で、腕の静脈から直接体内に液体や薬剤を投与します。

主な目的:水分・電解質補給、栄養補給、薬剤の投与

使用例:脱水症状、感染症の治療、抗生剤の投与

 皮下点滴(皮下補液療法:SC点滴)

皮下に少量ずつ輸液を注入し、体内へゆっくり吸収させる方法です。

主な目的:軽度~中等度の脱水改善

使用例:終末期医療や経口摂取が難しい患者の水分補給

中心静脈栄養(IVH:中心静脈カテーテル)

鎖骨下静脈や頸静脈などの太い血管にカテーテルを挿入し、高濃度の栄養や薬剤を投与する方法です。

主な目的:長期間の栄養補給が必要な場合

使用例:腸が十分に機能していない患者、経口摂取が完全に不可能なケース

在宅点滴のメリット

在宅で点滴を受けることには、以下のような利点があります。

通院の負担軽減

高齢者や寝たきりの方、体力のない患者にとって、通院は大きな負担です。在宅点滴により、移動の負担を減らすことができます。

感染リスクの低減

病院では、さまざまな感染症にさらされるリスクがあります。自宅での点滴は、そのリスクを軽減する効果があります。

患者の生活の質(QOL)の向上

住み慣れた環境で家族とともに過ごしながら治療を受けることができるため、精神的な安心感が得られます。

終末期ケアとしての活用

終末期の患者が無理に病院へ行くことなく、自宅で穏やかに過ごせるよう支援する手段としても有効です。

在宅点滴を行う際の注意点

在宅での点滴にはメリットが多い一方で、以下の点に注意が必要です。

医師の指示と管理が必要

在宅点滴は、医師の指示のもとで行う必要があります。

自己判断で点滴を行うことは危険です。

訪問看護師や介護スタッフと連携し、安全な管理を心がけましょう。

感染対策の徹底

点滴を行う際の手洗いや消毒を徹底し、感染症を防ぐことが重要です。

カテーテル挿入部の定期的な確認と清潔な管理が必要です。

点滴の速度と量の管理

点滴の流速が速すぎると、心臓や腎臓に負担をかける可能性があります。

医師や看護師の指導のもとで適切な調整を行いましょう。

副作用や異常時の対応

アレルギー反応や血管痛、浮腫(むくみ)などの副作用が起こることがあります。

異常が見られた場合は、すぐに医療機関へ連絡しましょう。

在宅点滴の実施方法

在宅点滴は、主に訪問看護師や家族が実施します。以下の流れで行われます。

医師の診察・指示

点滴が必要かどうかを判断し、適切な種類や量を決定します。

訪問看護師による点滴の準備・実施

清潔な環境を整え、点滴の管理を行います。

家族ができるサポート

点滴中の様子を観察し、異常がないか確認する。

針の固定が外れたり、点滴が漏れたりしないよう注意する。

定期的な診察と調整

点滴の効果や体調を医師が確認し、必要に応じて内容を調整します。

まとめ

在宅点滴は、患者さんが自宅で快適に過ごしながら治療を受けられる大切な選択肢です。

特に、高齢者や終末期の患者にとって、生活の質を向上させる大きなメリットがあります。

医師や訪問看護師との連携を密に行い、適切な管理を行いながら、患者さんが安心して過ごせるようサポートしていきましょう。