MENU

医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

視覚と老化に関する知識を深める

コラム2025/03/05

視覚と老化に関する知識を深める

外界の視覚情報を脳に伝える仕組み

視覚情報をとらえ、それを脳に伝える器官が目であり、直径約24mmの球形をしています。目の外側は、硬く白い強膜(白眼)で覆われており、前面部分は薄く透明な結膜が角膜のふちまで広がり、眼球やまぶたの裏側を覆います。
光は角膜を通り、瞳孔から水晶体を経て網膜上で像を結びます。網膜には光を感知する視細胞や血管があり、特に黄斑と呼ばれる部分には高密度の錐体細胞が集中しています。これにより、細かな像を認識することが可能です。各視細胞は神経線維につながり、それが束になって視神経を形成します。網膜で結ばれた像は視細胞で電気信号に変換され、視神経を通じて脳へ運ばれることで視覚として認識されます。

両眼視と立体視の仕組み

目の特徴的な機能の一つが両眼視です。左右の目で捉えた情報は、視神経を通じて脳へ伝達されます。視神経は視交叉で交差し、それぞれの視野の情報を左右の脳が分担して処理します。脳は両目から受け取る情報を統合し、微妙なズレを修正して違和感のない像を構築します。この働きにより、立体的な視覚や奥行きの感覚が生まれるのです。左右の視角のわずかな差が、脳で補正されることで物体の立体感を認識する仕組みは、日常生活での空間把握や動きの認識に重要な役割を果たしています。

加齢による目の変化と視覚機能の低下

加齢に伴い、目のさまざまな部位に変化が現れます。角膜では透明性が低下し、屈折力が変化します。結膜がたるむことで、下まぶたにひだができたり、ドライアイの症状が現れることもあります。水晶体が白く濁ると、白内障が進行し、視覚が妨げられます。また、瞳孔が小さくなることで暗い場所での視覚が低下します。さらに、硝子体や網膜、視神経、毛様体筋など目を構成する多くの部位で機能が低下し、視覚の劣化が進みます。これらの変化は日常生活に影響を与えるため、高齢者のケアでは特に注意が必要です。

老眼の原因と進行

老眼は水晶体とそれを支える毛様体小帯の老化による自然な生理現象です。通常、水晶体は毛様体小帯の緩みで厚みを増し、近くの物にピントを合わせます。しかし、水晶体が硬くなると、この調節機能が失われ、近くのものが見えにくくなります。近視の有無にかかわらず、老眼はすべての人に発生します。一般的に40代から症状が現れ、45歳前後で老眼鏡が必要になることが多いです。老眼は治療で改善するものではないため、矯正が唯一の対応策となります。

医療・介護現場では、患者さんの視覚の状態を正確に理解し、それに応じた支援を行うことが重要です。