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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

骨の役割と加齢に伴う変化:構造、機能、そして健康への影響

コラム2025/02/05

骨の役割と加齢に伴う変化:構造、機能、そして健康への影響

骨が担う力学的機能

人間の体は、成人でおよそ200個の骨によって成り立っています。これらの骨は関節でつながり、靭帯によってその連結部分が補強されています。骨の形はさまざまですが、大きく分けると長骨、短骨、扁平骨、不規則骨の4種類に分類されます。
長骨は、大腿骨や上腕骨に見られる長い骨で、人体の四肢を構成します。短骨は手根骨や足根骨など短く小さい骨、扁平骨は胸骨や頭蓋骨など薄い板状の骨、不規則骨は肩甲骨など形が不規則な骨を指します。
これらの骨は、体を支える「支持」、骨と骨が連結することで力点や支点となって体を動かす「運動」、衝撃に弱い臓器を守る「保護」という力学的な役割を担っています。

血液を作る重要な役割

骨は骨膜、骨質、骨髄から構成されています。骨膜は骨の表面を覆う結合組織で、神経や血管、リンパ管があります。骨質は緻密質と海綿質に分かれ、緻密質はカルシウムやリンを主成分とする硬い組織で骨膜の内側にあります。一方、海綿質は緻密質の内側にあり、多孔質でもろく、その内部に髄腔があります。髄腔には骨髄が満たされており、骨髄細胞が存在します。
骨のもう1つの大きな役割は血液を作ることです。骨髄には造血幹細胞があり、新しい赤血球、白血球、血小板がここで生成されます。

加齢による骨量の変化

年齢を重ねると、骨密度と骨量(骨中のカルシウム量)が減少します。骨量は10代後半から20代にかけて急増し、最大値に達しますが、40代頃まではほぼ一定に保たれます。その後、徐々に減少し、特に女性では閉経後にエストロゲンの分泌が止まることで急激に減少します。この減少率は年間2~3%に及ぶこともあります。これにより、高齢女性は骨粗鬆症やそれによる骨折のリスクが増加します。
骨量を増やすには、有酸素運動よりも瞬発力を鍛える運動が有効とされますが、高齢者には安全を考慮してウォーキングなどの有酸素運動が推奨されます。

関節軟骨の老化と影響

骨と骨がつながる関節では、加齢に伴い関節軟骨が変形します。年齢とともに軟骨がすり減ると、変形性関節症(OA)を発症し、関節の痛みやこわばりが生じます。これにより、関節の動きが制限され、日常生活動作(ADL)の能力が低下します。痛みや動かしにくさが運動を妨げ、さらに関節の悪化を招きます。
関節軟骨の変化は20代から始まり、60代では8割以上の人に膝関節や股関節、肘関節、手指関節で変化が見られます。