コラム2025/01/28
統合失調症の理解と支援
統合失調症とは
統合失調症は、精神疾患の一つであり、主に思考、感情、行動に影響を及ぼします。
この疾患は人口の約1%が生涯のうちに発症するとされており、男女問わず発症しますが、一般的に男性では10代後半から20代前半、女性では20代後半から30代前半に多く見られます。
統合失調症は慢性的な疾患であり、早期の診断と治療がその後の生活の質を大きく左右します。
そのため、正しい知識を持つことが重要です。
主な症状
統合失調症の症状は、大きく分けて以下の3つに分類されます。
陽性症状
陽性症状とは、通常の精神活動に加わる異常な症状を指します。
具体的には以下のようなものがあります:
幻覚: 見えないものが見える、聞こえないものが聞こえる(例: 声が聞こえるなど)
妄想: 現実に基づかない信念(例: 他人が自分を監視していると思い込む)
思考の混乱: 論理的な考え方ができなくなる、話が支離滅裂になる
陰性症状
陰性症状は、通常あるべき精神活動が減少する、または欠如する状態を指します。
感情の平坦化: 喜怒哀楽の感情が乏しくなる
意欲の低下: 何かを始めたり、やり遂げたりする力が弱まる
社会的引きこもり: 他人との交流を避ける
認知機能の障害
認知機能に影響が出る場合もあります。
集中力の低下: 注意を維持するのが難しくなる
記憶力の低下: 短期記憶や長期記憶が影響を受ける
問題解決能力の低下: 複雑なタスクをこなすのが難しくなる
原因
統合失調症の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下の要因が関連していると考えられています。
遺伝的要因
家族に統合失調症の人がいる場合、発症リスクが高まることが分かっています。
ただし、遺伝だけが原因ではありません。
脳の異常
脳の構造や機能の異常、特に神経伝達物質(ドーパミンやグルタミン酸)の不均衡が関与しているとされています。
環境的要因
出生前の栄養状態、ウイルス感染、幼少期のストレス、社会的孤立などがリスク要因とされています。
また、思春期や成人初期に強いストレスを受けることが発症のきっかけとなる場合もあります。
治療方法
統合失調症は、適切な治療を受けることで症状をコントロールし、日常生活を送ることが可能です。
主な治療法は以下の通りです。
薬物療法
抗精神病薬: ドーパミンの働きを調整する薬で、陽性症状の緩和に効果的です。
第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)は副作用が少なく、広く使用されています。
心理社会的治療
認知行動療法: 幻覚や妄想の対処法を学ぶ
社会技能訓練: コミュニケーション能力や問題解決能力の向上を目指す
家族療法: 家族が患者を支援する方法を学ぶ
リハビリテーション
日常生活に戻るための支援が行われ、就労支援や住居支援などが含まれます。
誤解と偏見をなくすために
統合失調症は誤解や偏見の対象となることが多い疾患です。
その理由の一つは、症状が理解しにくいことにあります。
誤解: 「統合失調症の人は暴力的である」というイメージがありますが、多くの患者はむしろ自分自身を守るために内向的になることが多いです。
偏見: 病名自体が誤解を招きやすいという指摘があり、日本では2002年に旧称「精神分裂病」から現在の名称に変更されました。
正しい知識を広めることで、患者やその家族が安心して治療を受けられる環境を整えることが大切です。
まとめ
統合失調症は、適切な治療と支援があれば、安定した生活を送ることができる疾患です。
患者やその周囲の人々が正しい情報を持ち、共に理解し合うことが、偏見の解消と患者の回復への大きな一歩となります。