コラム2020/01/14
介護事業者の倒産数 過去最多 対策は?
介護事業者の倒産数 過去最多 対策は?
東京商工リサーチが公表したレポートによると、2019年の1年間に倒産した介護事業者は、過去最多を記録した2017年と並び111件。100件を超えるの は4年連続とレポートされました。 https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200107_01.html
今回のレポートによると、昨年の倒産は「訪問介護」が58件、デイサービスなどの「通所・短期入所」が32件、「有料老人ホーム」が11件、「その他」が10件。前年と比べると、デイサービスや有料老人ホームは減っているが訪問介護が急増しています。ヘルパー不足を背景に13件(28.9%)多くなっています。
主な倒産の要因は人材不足
主な要因は、深刻な人手不足、人件費の上昇、人材の確保も含めた競争の激化などが列挙されています。今回の東京商工リサーチはレポートでは、「過小資本の企業ほど人手不足が深刻さを増す悪循環に陥っている」、「人材を確保できる事業所とそうでない事業所の格差拡大も危惧される」と指摘しています。厚労省の調べでは、2050年までに、介護人材は約55万に不足するとレポートされており、サービスを適切に受けられない“介護難民”が一段と増加する懸念があります。
(厚生労働省 介護分野の現状等について) https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000489026.pdf
総合的な介護人材確保対策
政府の人材対策としての主な取組は以下の5点です。
介護職員の 処遇改善
リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準を目指し、経験・技能のある 介護職員に重点化しつつ、更なる処遇改善
多様な人材 の確保・育成
介護福祉士修学資金貸付、再就職準 備金貸付による支援、中高年齢者等の介護未経験者に対する入門的研修の実施から、研修受講後のマッチングまでを一体的に支援、さらに、入門的研修受講者等への更なるステップ アップ支援(介護の周辺業務等の体験支援)
離職防止 定着促進 生産性向上
介護職機能分化・多職種チームケア等の推進 、介護ロボット・ICT活用推進の加速化、生産性向上ガイドラインの策定・普及、認証評価制度ガイドラインの策定・普及
介護職 の魅力向上
学生やその保護者、進路指導担当者 等への介護の仕事の理解促進 、介護を知るための体験型イベントの開催だけでなく、若者、子育て層、アクティブシニア層に対する介護職の魅力などの発信
外国人材の受入れ環境整備
「特定技能」等外国人介護人材の受入環境整備(介護技能向上のための集合研修、介護の日本語学習支援、介護業務等の相 談支援・巡回訪問の実施等)
まとめ
東京商工リサーチや厚労省の調査でも示されているように、人材不足から倒産を余儀なくされ、今後もこの傾向は続くと見られています。2019年10月に介護報酬が改訂され、介護人材の確保への対策が進められており、新たな施策と外国人介護人材の受け入れや介護ロボットの活用などが挙げられています。しかしながら、現実的にはまだ時間を要すると思われ、「待ったなし」の状況下において、サービスを適切に享受できない「介護難民」が一段と増加すると危惧されています。政府のみに頼らず、地域が一丸となって、介護基盤が強化するための具体的なアクションを講じていく必要性に迫らています。