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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

突然の胸痛への対応と理解

コラム2024/10/17

突然の胸痛への対応と理解

現場で「胸が痛い」と訴える利用者さんに対応した経験はないでしょうか?今回は、胸痛に関する基本的な知識と、その原因に応じた適切な対応について詳しく解説します。

胸痛の原因について

胸痛は、臓器に起因するものと、その他の要因によるものに大別されます。主な臓器による原因には、心臓(狭心症、心筋梗塞など)、肺(気胸、肺塞栓)、胃や膵臓などの消化器系疾患が考えられます。それ以外にも、肋骨骨折や帯状疱疹など、筋骨格系やウィルス性疾患が原因となる場合もあります。各疾患ごとの詳細な特徴を以下で確認しましょう。

主な胸痛の原因と特徴

心臓由来の胸痛

狭心症: 胸の中央に圧迫感や絞られるような痛みが現れ、運動やストレスで増悪することがあります。痛みは通常5~10分以内に軽減しますが、症状が持続する場合や改善がない場合には心筋梗塞の可能性も疑われます。狭心症と診断されている患者には、ニトロペンなどが処方されており、舌下に入れることで痛みが軽減します。

急性心筋梗塞: 突然の強い胸痛が30分以上続き、左腕や下顎、背中に放散することがあります。高齢者では無痛性心筋梗塞も報告されており、倦怠感や息切れのみが現れることがあるため、慎重な観察が必要です。

解離性大動脈瘤: 胸から背部にかけて激しい痛みが放散し、痛みが次第に移動していくのが特徴です。迅速な診断と対応が必要で、ショック状態や死に至るリスクが高いため、早急な処置が求められます。

肺由来の胸痛

肺塞栓: 突然の呼吸困難、胸痛、動悸が特徴です。長期間の安静状態や長時間のフライト後に発症しやすく、血流が遮断されることで急激に症状が進行します。迅速な医療対応が必要です。

気胸: 突然の胸痛や息苦しさ、乾いた咳が特徴で、特に若年男性や痩せ型の人に多く見られます。自然気胸は多くのケースで再発するリスクがあり、適切な管理が必要です。

消化器系疾患による胸痛

胃潰瘍、膵炎、胆石症などは、胸痛の他にそれぞれの臓器の部位に応じた痛みが伴うことが多く、胸痛との鑑別診断においては腹部症状の確認が重要です。

その他の原因

肋間神経痛: 肋骨の走行に沿った鋭い痛みが特徴で、ストレスや体位変換などで増悪することがあります。

肋骨骨折: 咳や深呼吸で痛みが増悪する場合は、肋骨骨折の可能性があります。特に転倒などの外傷歴があるかどうかを確認することが重要です。

帯状疱疹: 初期には肋骨に沿った痛みが出現し、数日後に皮膚上に発疹が現れます。迅速な診断と抗ウイルス薬の投与が重要です。

胸痛への対応方法

胸痛が現れた際に、最も重要なポイントはその原因を速やかに特定し、対応を開始することです。特に心筋梗塞や肺塞栓のように命に関わる可能性のある疾患が疑われる場合、速やかな医療介入が必要です。

一方、肋骨骨折や肋間神経痛などの場合は、急激な生命危機に陥るリスクは低いものの、適切な疼痛管理と安静が重要です。患者の痛みの程度や既往歴、現在服用中の薬剤を確認することが、初期対応のカギとなります。

まとめ

胸痛の訴えは、軽視できない重大なサインとなることが多いため、適切な判断と迅速な対応が求められます。医療職の皆さんが、利用者の訴えを見逃さず、適切に対応できるよう、今回の内容が少しでも役立てば幸いです。