コラム2024/10/03
味覚は遺伝する?環境も大きな影響を与えるそのメカニズム
私たちが感じる「味覚」は、日々の食事の楽しみを左右する大切な感覚の一つです。しかし、この味覚の感じ方には個人差があり、「なぜこの味が好きなのか?」と疑問に思ったことがあるかもしれません。実は、味覚には遺伝的な要素と環境的な要素の両方が深く関わっています。今回は、味覚がどのようにして形成されるのか、遺伝と環境の役割についてお伝えします。
味覚はどこまで遺伝する?
味覚に関わる遺伝的な要素は、特に「苦味」を感じる能力に関連していることが分かっています。特定の遺伝子(TAS2R38)が、この苦味を感じる感受性に関与しています。この遺伝子を持っている人は、ブロッコリーやコーヒーなど苦味を強く感じやすいという研究があります。逆に、この遺伝子を持っていない人は、これらの食品を苦いと感じにくく、好んで食べることが多い傾向にあります。
また、甘味や塩味に対する感受性も遺伝的な影響を受けることがありますが、苦味ほど明確な遺伝子の関与はまだ解明されていません。それでも、家族で似た味覚の傾向があることが多いのは、遺伝的要因が背景にあると考えられます。
環境が与える大きな影響
しかし、味覚は単に遺伝だけで決まるものではありません。私たちがどんな味を好むかは、幼少期からの食習慣や文化、経験が大きな影響を与えています。例えば、辛い料理を日常的に食べる文化で育った人は、辛さに対して耐性が高くなり、辛いものを好む傾向があります。逆に、辛いものをほとんど食べない環境で育った人は、少しの辛味でも強く感じることがあります。
また、子供時代に食べ慣れた食品や味覚の経験も、成人後の味覚に大きく影響を与えると言われています。親がどのような食事を提供するか、どんな食品に触れる機会があったかが、後々の味覚の好みに結びつくことが多いのです。特に幼少期の味覚の経験は、その後の食の嗜好を長期にわたって左右することが多いとされています。
好みは変わるもの?
さらに興味深いのは、味覚が年齢や経験によって変化することです。子供の頃には嫌いだった野菜や食材が、大人になると好まれるようになるケースは珍しくありません。これは、味覚の感受性が年齢とともに変わることや、経験を重ねることで苦手な味に慣れていくためです。
例えば、子供の頃に苦手だったコーヒーが、成長するにつれて好きになる人も多いです。これは、苦味に対する感受性が変化するだけでなく、大人になると「カフェインによる覚醒効果」など、コーヒーの他の側面も楽しむようになるからかもしれません。
まとめ
味覚は遺伝と環境の両方に影響を受ける複雑な感覚です。特定の味に対する感受性は遺伝的に決まる部分がありますが、育った環境や食の経験も大きく関与しています。また、味覚は変わりやすいもので、年齢や経験を通じて好みが変化していくこともあるのです。食事はただの栄養摂取ではなく、私たちの個性や文化を反映するもの。次に食べる一口を味わう際、味覚の不思議なメカニズムに思いを馳せてみてください。