コラム2024/09/26
知っておきたい「せん妄」と家族の役割 ~患者を支えるために~
せん妄とは、急性の脳機能不全により引き起こされる意識障害の一種で、特に高齢者や入院患者に多く見られます。見当識障害、つまり時間や場所が急にわからなくなることから始まり、注意力や思考力が低下し、幻覚や妄想、睡眠障害などさまざまな症状が現れます。
病院と在宅での発見の違い
病院では、せん妄を最初に発見するのは多くの場合看護師です。しかし、在宅ケアでは家族がその役割を担うことが多くなります。そのため、医師だけでなく、家族の観察が重要になります。家族の方が気づいたことを、訪問診療や近くの医療機関に適切に伝えることが、早期発見と適切な対処につながります。
せん妄の診断基準
米国精神医学会の「DSM-5」では、せん妄は以下のように診断されます。
- 注意障害:集中や注意の切り替えが困難になる
- 意識の変化:数時間から数日の短期間で環境認識が低下
- 認知機能の低下:記憶力や見当識、知覚に障害が現れる
- 他の神経障害や昏睡といった状態では説明がつかない
- 他の医学的疾患や薬物中毒が原因である場合が多い
終末期せん妄について
終末期におけるせん妄は、原因が多岐にわたり、不可逆的な場合が多いため、改善が難しいケースが多いです。このような状況では、家族との話し合いが重要です。せん妄は時に自然な死のプロセスの一部であり、治療においても家族の理解と協力が不可欠です。
家族の役割とサポート
家族は、せん妄患者の重要な観察者として大きな役割を果たします。患者の変化に気づき、医療スタッフと適切に情報を共有することで、より良いケアが提供されます。ただし、家族もまた、患者の精神症状や身体症状の影響を受け続けるため、ストレスを抱える「第二の患者」になるリスクがあります。そのため、家族自身へのサポートも非常に大切です。
医師が家族の話を聞くことが適切でないケースもあります。患者中心に話が進みがちになるため、家族のストレスを十分に理解できないことがあるからです。こうした場合、訪問看護師や他の専門職が家族のサポートを担うことが効果的です。
まとめ
せん妄は患者だけでなく、家族にとっても大きな試練となります。多職種の連携によるサポートが、家族を含めた全体的なケアの質を高めるために重要です。皆さんも大切な家族を支えるため、ぜひ参考にしてみてください。