コラム2024/09/10
高齢者の内服管理における注意点
高齢者における内服管理は非常に重要な課題ですが、複数の慢性疾患を抱えるケースも多いため、内服薬の管理は複雑化しています。高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)による問題や、薬物動態の変化を考慮した適切な対応が求められます。高齢者の内服管理における主な注意点について解説します。
複数医療機関を受診している高齢者は多い
高齢者の多くは複数の医療機関を受診しています。厚生労働省の調査によると、日本国内で65歳以上の高齢者の約70%が2つ以上の医療機関を受診していると言われています。これは、異なる医師がそれぞれの専門分野から処方を行うことで、複数の薬が同時に処方されることを意味します。結果として、ポリファーマシーが発生しやすくなり、薬物の相互作用や副作用のリスクが高まるのです。例えば、心不全や不整脈の治療に使用されるジゴキシンは、腎機能が低下している高齢者において体内に蓄積しやすく、中毒のリスクが高まります。
薬物動態が成人と一緒ではないので副作用などに注意が必要
高齢者は加齢に伴い、肝機能や腎機能が低下することが多いため、薬物の代謝や排泄が遅れます。例えば、抗凝固薬であるワルファリンは、肝臓で代謝されるため、肝機能が低下している高齢者では作用が長引き、出血のリスクが増加します。さらに、体脂肪率の増加により、脂溶性の薬剤が脂肪組織に蓄積し、薬の作用が予想以上に長く続く場合もあります。特に、ベンゾジアゼピン系薬剤はその影響を受けやすく、日中の眠気や転倒のリスクが増大します。
服薬カレンダーなどの工夫が大事
高齢者の内服管理においては、医師や薬剤師の適切な判断と多職種連携が不可欠です。複数の医療機関を受診する高齢者に対しては、処方薬の重複や相互作用を防ぐための「お薬手帳」や電子カルテを活用した情報共有が推奨されています。また、家族や介護者の協力を得て、服薬の時間や量を管理することも重要です。認知機能の低下や視力の衰えにより、服薬指示を守れない場合があるため、服薬カレンダーやピルボックスを使用するなどの工夫が必要です。
まとめ
高齢者の内服管理の改善は、患者の生活の質を向上させるだけでなく、医療費の抑制にも寄与します。高齢者に対する薬物療法を見直し、必要な薬剤のみを適切に使用することで、ポリファーマシーによるリスクを最小限に抑え、より安全で効果的な医療を提供することが求められています。