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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

パーキンソン病における自律神経障害の影響と対策

コラム2024/06/17

パーキンソン病における自律神経障害の影響と対策

パーキンソン病の日常臨床では運動症状が重視されがちですが、自律神経障害も生活の質に大きな影響を与えるため重要です。自律神経障害は生活様式の見直しや薬物治療によって軽減する場合があり、意識したケアが必要です。自律神経障害には心血管系、消化器系、泌尿器系、皮膚血管系の障害が含まれます。

自律神経障害の詳細

自律神経障害は、便秘や心臓交感神経障害がパーキンソン病の前駆症状として現れることが知られています。ブラークのレビー小体進展仮説によれば、自律神経障害は末梢から中枢へと進行する可能性があり、早期診断においても重要です。

心血管系の自律神経障害

起立性低血圧

起立性低血圧は、寝た状態から立ち上がった際に血圧が低下し、めまいやふらつきを引き起こします。重度の場合は失神も伴います。疲労感、頭痛、肩こりといった症状も見られます。対応策として、弾性ストッキングの着用や塩分・水分摂取、段階的な起立動作の指導があります。メタ解析によると、パーキンソン病患者の約30%に見られ、特に罹病期間が長い人や運動症状の重い人に多いです。

食事性低血圧

食事性低血圧は、食後に血圧が低下し、特に朝食後に立ち上がってトイレに行く際にめまいや失神を引き起こします。通常は、食後に心拍数の増加と血管収縮で血圧低下を防ぎますが、自律神経障害によりこの働きが不十分となります。病変部位としては、辺縁系、延髄毛様網様体、脊髄中間外側核、交感神経節後線維などが考えられます。

臥位高血圧

臥位高血圧は、臥床時に血圧が上昇する状態です。臨床現場での対応が難しく、特に夜間の管理が課題となります。対策として、夜間は頭部を挙上し、下肢を下垂させて寝るよう指導します。

治療法

薬物治療としては、抗パーキンソン病薬のドロキシドパ(ドプス)がありますが、効果が乏しい場合が多く、エチレフリン、メチル硫酸アメジニウム、ミドドリン、フルドロコルチゾンを組み合わせて使用します。臥位高血圧に対しては、生活指導をしっかり行い、患者や介護者への教育も重要です。

評価方法

ヘッドアップティルト試験

ベッドを60°まで起こし、3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下した場合を陽性とします。

パーキンソン病患者の生活の質に重要な影響を与えるため、自律神経障害を意識したケアは非常に重要です。主な症状として、心血管系の起立性低血圧、食事性低血圧、臥位高血圧があります。起立性低血圧には弾性ストッキングの着用が有用です。自律神経障害は生活様式の見直しや薬物治療で軽減することがあり、生活指導と内服管理を併せて行うことが求められます。