コラム2024/06/10
パーキンソン病患者へのケアガイド:嗅覚障害、痛み、疲労、体重管理のポイント
嗅覚低下
パーキンソン病の患者さんにとって、嗅覚障害は非常に一般的で、診断時にはすでに多くの方が経験しています。この嗅覚の低下により、食べ物の味を感じにくくなり、結果として食欲が低下することがあります。
対応策
味付けを工夫することで、食欲低下に対処します。
パーキンソン病の嗅覚障害は、においの検知や識別、同定といった複雑な機能が障害されることが特徴です。この障害の原因は嗅球だけでなく、梨状葉皮質や扁桃体などの中枢神経経路の機能不全にあると考えられています。
治療方法
ドパミン治療は効果がありません。嗅覚障害はパーキンソン病の早期発見の手がかりになると期待されています。
痛み
パーキンソン病では個人差がありますが、足や背中、腕、首など様々な部位で痛みが生じることがあります。
対応策
痛みのケアとして、マッサージや心理的サポートが重要です。ストレッチや温熱療法といったリハビリテーションも有効です。がんやALS患者の緩和ケアは進んでいるものの、パーキンソン病患者の痛みに対する緩和ケアはまだ十分に確立されていません。初期段階からの長期的な緩和ケアが重要です。
パーキンソン病患者の痛みの有病率は約67%で、高齢者と比較しても高く、女性に多いとされています。痛みは下肢、背部、上肢、頚部に多く見られ、運動症状が強い側に現れることが一般的です。稀に口腔内、陰部、胸部、腹部にも現れます。痛みは筋骨格、神経障害、ジストニア、中枢性、アカシジアの5種類に分類されます。パーキンソン病の痛みは侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛の両方が関連しています。
治療方法
抗パーキンソン病薬が効果を示すことがありますが、効果がない場合、侵害受容性疼痛には非ステロイド性鎮痛剤やオピオイド製剤を、神経障害性疼痛にはプレガバリン、抗うつ薬、抗てんかん薬などを使用します。
疲労
パーキンソン病では、うつ病とは別に疲労が指摘されています。
対応策
疲労は身体的疲労と精神的疲労に分けられます。持久力の低下に対しては、リハビリテーションによる持久力向上の訓練が有効です。
治療方法
薬物治療としてはモダフィニル(国内では保険適応外)、ブロモクリプチン、プラミペキソール、ラサジリン、アマンタジンなどがあり、抗パーキンソン病薬が効果を示すことがあります。
体重減少・低栄養
パーキンソン病では体重減少が見られます。食事の時間や内容が薬の効果に影響するため、医師や看護師、管理栄養士が評価を行います。
対応策
多くの患者は自然と食事量を増やすことで対応していますが、生活習慣病がない場合、補助栄養やお菓子などの間食を増やすことも一つの工夫です。過去には低タンパク食が試みられたこともありましたが、十分なエビデンスはなく、過度なタンパク制限は低栄養や筋肉量減少の原因となるため注意が必要です。
パーキンソン病患者は発症前から体重減少が見られ、多くの場合、進行とともに体重が減少します。