コラム2024/05/28
パーキンソン病患者さんが抱えるリスクに対する看護
悪性症候群
悪性症候群の原因はまだはっきりとは解明されていませんが、抗パーキンソン病薬の減量や中断がきっかけで発熱などの症状が現れることがあります。この症候群は命に関わる可能性もあるため、原因不明の急な発熱が見られた場合には、薬の減量や中断がなかったかを確認する必要があります。
対応策として、体を冷やす(クーリング)、水分を摂取させ、補液するといった対応をとります。
悪性症候群は、抗精神病薬の使用や抗パーキンソン病薬の減量や中断によって、高熱、多量発汗、意識障害、筋緊張亢進などの症状が引き起こされるのが特徴です。これらの症状は、感染症や便秘、脱水などとも関連して発生することがあります。また、手術や急変による全身状態の悪化で絶食指示が出された際にも注意が必要です。
パーキンソン病患者が急な発熱や多量発汗を示した場合には、悪性症候群の可能性を考え、抗パーキンソン病薬の減量や中断がなかったかを確認する視点が求められます。悪性症候群が疑われる場合には、高熱や脱水により症状が悪化しないように氷枕で体を冷やし、補液を行います。同時に、医師と連携して抗パーキンソン病薬の増量や、重症例ではダントロレンナトリウム(筋弛緩薬)の使用を検討します。予防には、悪性症候群の要因となる便秘や脱水を避けるよう心がけ、事前に本人や家族にも理解を求めることが重要です。
麻痺性イレウス・腸閉塞
パーキンソン病の患者は、消化管障害による麻痺性イレウスや、重度の便秘が原因の腸閉塞を引き起こすことがあります。予防策として、生活習慣の改善や適切な下剤の選択が大切です。
腸閉塞や麻痺性イレウスの症状には、便秘、食欲不振、吐き気や嘔吐などがあります。腹部の聴診では、麻痺性イレウスでは腸蠕動音が減少または消失し、腸閉塞では高音(金属音)が聞こえることが特徴です。しかし、金属音の識別は難しいため、疑わしい場合には医師と協力して画像検査を行うことが必要です。予防策としては、生活習慣を見直すことと、個々に適した下剤を選択することが重要です。最近では、さまざまな作用機序を持つ下剤の効果が報告されており、最新情報に常に注意を払うことも重要です。
血圧変動(臥位高血圧・夜間高血圧/起立性低血圧・食事性低血圧)
パーキンソン病は、心血管系自律神経機能の障害により、起立性低血圧や食事性低血圧、臥位高血圧や夜間高血圧などの血圧変動を引き起こすことがあります。これらの症状に対しては、起立性低血圧や食事性低血圧には水分や塩分の摂取を促すこと、ゆっくりと起き上がる動作や分割して食事を摂ることが有効です。また、臥位高血圧や夜間高血圧には、ベッドの頭側を少し高くすることが効果的です。ただし、水分や塩分の摂取については、心不全や高血圧、排尿障害と関連するため、摂取量や時間については医師と相談する必要があります。日中だけでなく、早朝や夜間にも血圧を測定し、食後や起立時の血圧変動も評価することが重要です。さらに、医師と連携して、血圧に影響を与える薬剤の服用タイミングについても適宜見直します。