コラム2024/04/08
在宅酸素療法の基礎知識
在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy)は、患者が自宅や他の場所で酸素を利用する治療法のことです。通常は、肺や心臓の疾患などで、血中の酸素レベルが低下している場合に使用されます。酸素は、身体の細胞が正常に機能するために必要な重要な要素であり、低酸素症(低酸素血症)は身体に様々な影響を与える可能性があります。
在宅酸素療法の目的
・血液中の酸素レベルを増やし、低酸素症を改善する。
・呼吸困難を軽減し、日常生活の質を向上させる。
・患者の活動レベルを維持または向上させる。
酸素供給方法
酸素は様々な方法で供給されます。主な方法には次のものがあります.
酸素タンクまたはシリンダー
携帯性があり、患者が外出する際に使用できます
酸素コンセントレータ
空気から酸素を取り出し、患者に供給します。一般的に家庭用で使用されます。
液体酸素システム
液体酸素を蒸発させて気化し、患者に供給します。比較的長時間の使用に適しています。
在宅酸素療法の管理
・医師の処方が必要です。酸素療法の必要性や適切な酸素フロー率などが決定されます。
・患者や介護者は、酸素装置の正しい使用方法を学ぶ必要があります。
・定期的なフォローアップが重要です。医師や看護師が定期的に患者を評価し、療法の効果を確認します。
・酸素タンクやコンセントレータの交換や補充も管理の一部です。
在宅酸素療法の改善効果
まず大前提として、肺、心臓、肝臓、腎臓など、体の中の臓器が働くためにはエネルギーが必要です。酸素はあらゆる臓器の働きを守っています。では、在宅酸素療法によって、酸素不足を改善することでどのような効果が期待できるのでしょうか。
・息切れの改善
・入院回数の低減
・長く歩くなどの運動能力の改善
・記憶力・注意力低下の改善
・生きがいのある生活を送ることができる
・心臓への負担を軽減
以上のような効果が期待できます。他にも、肺以外の臓器にかかる負担を軽減することにより、高血圧や心不全、脳卒中、狭心症、急性心筋梗塞などの合併症予防にも期待ができます。
在宅酸素の注意点
・火気の近くでの使用は危険です。喫煙や火気の近くでの使用は厳禁です
・過度な酸素の摂取は有害です。医師の指示に従って正しいフロー率を守ることが重要です。
・酸素システムの正しいメンテナンスと清掃が必要です。
在宅酸素療法導入の流れと費用負担
在宅酸素療法は医師により処方されます。基準を満たすと健康保険で在宅酸素療法を受けることができます。
保険適用基準
・慢性的にPaO2が低く、その値が55torr以下の方
・慢性的にPaO2が低く、60torr以下であり、歩いたり、睡眠中に呼吸が浅くなった時にさらにPaO2が大きく低下する方
導入までの流れ
1.まずは機器を医療機関からレンタルします。健康保険の適応上、ひと月に1度以上受診をする必要があります。
2.機器の設置、操作の説明、機器の緊急対応、定期メンテナンスは機器の取扱会社が行います。こういった対応への自己負担の費用は発生しません。
3.自宅では酸素供給装置からチューブを通して酸素を吸入します。チューブの先は鼻の下で固定するような鼻カニューレを用いることが多いです。外出の際は、軽量の酸素ボンベを用います。酸素を吸入する量や時間は、主治医と相談して決めます。
費用負担
1.酸素濃縮器だけ使用する場合(1か月)
1割負担:¥6,500 2割負担:¥13,000 3割負担:¥19,500
2.酸素濃縮器、携帯用酸素ボンベを使用する場合(1か月)
1割負担:¥7,680 2割負担:¥15,360 3割負担:¥23,040
機器の電気代
機器の使用料以外にも、毎月の電気代がかかり、使用量の目安の金額は以下の通りです。
・酸素使用量2L:約¥1,500
・酸素使用量3L:約¥1,600~3,600
・酸素使用量5L:約¥3,000~4,500
・酸素使用量7L:約¥4,500~8,500
※上記金額はあくまでも目安です。実際の電気代はご利用の状況によって異なります。