MENU

医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

がん患者の倦怠感とその総合的アプローチ。評価、原因検索、治療の概要

コラム2024/02/19

がん患者の倦怠感とその総合的アプローチ。評価、原因検索、治療の概要

がん患者の倦怠感

進行がん患者において最も頻繁に報告される症状であり、複数の研究によりその有病率は60~90%とされています。この倦怠感は身体的、精神的、認知的な疲労感を含む広範で持続的な苦痛を伴うものであり、「がんやがん治療に関連した、通常の機能を妨げるような極度の疲労」として定義されています。

倦怠感は一次的倦怠感と二次的倦怠感に区分されます。一次的倦怠感は腫瘍自体によるもので、サイトカインが関与している可能性がありますが、その病態生理はまだ充分に解明されていません。一方、二次的倦怠感は貧血や電解質異常、感染、薬剤などが原因となっています。

倦怠感の評価

がん患者が自覚しにくく医師に訴えにくい傾向があります。そのため、医療者は初診時や治療中、必要に応じて倦怠感の有無や重症度を評価することが推奨されています。倦怠感の表現は様々で、「だるい」以外にも「おっくう」「疲れやすい」「動きたくない」などが含まれ、質問する際には慎重なアプローチが必要です。評価にはNRS(numerical rating scale)を使用し、10段階で倦怠感の程度を評価します。

原因検索

治療可能な原因が複数存在する可能性があります。疼痛や睡眠障害、抑うつ、貧血、代謝異常、薬剤性、脱水、感染症、併存疾患などが倦怠感の原因となり得ます。特に注意が必要なのは、治療可能な原因が時間とともに変化することがあり、継続的な評価が求められる点です。

治療のアプローチ

改善可能な病態に対する治療から始まります。一次的な倦怠感に対しては薬物療法や非薬物療法が検討されます。海外では精神刺激薬メチルフェニデートが倦怠感に対する薬物療法として研究されていますが、日本ではナルコレプシーの適応しかなく使用は制限されています。代わりに、ステロイドが倦怠感に対する最も広く使用される薬物となっています。

薬物療法

ステロイドの効果や使用量についてのエビデンスはまだ十分ではありませんが、デキサメタゾンやメチルプレドニゾロンの使用が報告されています。ただし、ステロイドの使用には副作用が伴うため、予後や患者の状態を考慮して慎重に行う必要があります。特に長期間の使用では感染症や骨粗鬆症のリスクが高まり、終末期での使用についても統一された見解はありません。

非薬物療法

カウンセリングや運動療法、体力温存法、気分転換やリラックスが効果的です。患者と家族とのコミュニケーションを通じて目標を設定し、症状の軽減を図ることが重要です。運動療法は特に有効性が高く、心肺機能の改善や気分の向上、睡眠の改善に寄与します。ただし、リスクを検討して適切な運動量を決定する必要があります。

体力温存法は、活動と休息のバランスをとりながら、エネルギーを節約する方法です。倦怠感の少ない時間帯を認識し、その時間帯に優先順位の高い活動を行うことで、患者が持続可能な活動を続けるのに役立ちます。気分転換やリラックスに関しても、個々の好みや感じ方に合わせてアプローチすることが大切です。