コラム2024/01/29
むくみのサイン~内臓異常や薬剤の副作用からみえる警告サイン~
顔や身体を見て、むくみが目立つ場合には、内臓の異常が隠れていないか検査が必要です。通常、身体は余分な水分を蓄積しないように調整されていますが、臓器に障害が生じるとそのバランスが崩れ、むくみが現れることがあります。
腎臓が原因となるむくみ
腎臓が原因となるむくみには、タンパク質が尿に漏れるネフローゼ症候群や慢性腎不全が含まれます。近年では、糖尿病による腎症も増加しており、これがむくみの原因となることがあります。治療には利尿剤が使われますが、腎機能の低下が進む場合は透析が必要です。進行を遅らせる薬も存在しますが、日常の食事療法が最も重要です。また、この病気は血中のカリウムを上昇させる可能性があるため、それを調整する薬も必要です。
心臓が原因のむくみ
心臓が原因のむくみは、心臓機能の低下に起因します。初期段階では足のむくみが見られますが、進行すると全身に広がることがあります。心臓の負担を軽減するためには、強心剤、利尿剤、硝酸薬が使用されますが、時には酸素吸入や人工呼吸器が必要になることもあります。心臓弁の異常や不整脈、心筋梗塞が原因となる場合は、命に関わることもあります。高齢者では症状が軽度であっても急速に悪化することがあるため、注意が必要です。
肝臓やその他の原因によるむくみ
肝臓やその他の原因によるむくみもあります。肝硬変によるむくみは、肝機能の低下により血中のタンパク質が減少し、むくみが生じます。甲状腺の機能低下やさまざまな薬剤の影響も全身のむくみの原因となり得ます。特発性浮腫は原因不明のままむくみが続く症状で、女性に多く見られます。また、下記のような薬剤が原因のむくみがみられることもあります。
むくみを起こしやすい薬
鎮痛剤
ボルタレン、ポンタール、ロキソニン、ソレトンなど
「プロスタグランジン」の合成を抑制することで鎮痛効果を示しますが、同時に利尿作用も抑制されて、むくみを起こすことがあります。
ステロイド剤
プレドニンなど
腎尿細管でナトリウムの再吸収を促進してむくみを起こします。
漢方薬
芍薬甘草湯、小青竜湯、人参湯など
漢方薬に含まれる甘草の作用により、むくみを起こすことがあります。
肝庇護剤
強力ネオ、ミノファーゲンシーなど
強力ネオミノファーゲンシーの主成分はグリチルリチンといい、漢方薬の甘草から抽出したものです。その作用によりむくみを起こすことがあります。
糖尿病薬
アクトスなど
腎臓の尿細管でのナトリウム再吸収促進作用と、血管浸透圧亢進の作用でむくむことがあります。
降圧薬
ノルバスクなど
カルシウム拮抗薬では血管拡張作用により、血管の透過性が亢進をしてむくみを起こすことがあります。
抗精神病薬
トリプタノールなど
抗利尿ホルモンの分泌作用があり、むくみを起こすことがります。
いずれの病気においても、利尿剤が一般的に使用されます。これは腎臓に作用して余分な水分を尿に排出する効果がありますが、長期間の使用では血中のカリウム減少やむくみの効果低下が生じる可能性があります。高齢者では脱水や低血圧にも注意が必要です。むくみの治療では、原因を迅速に判断して適切な治療を選択することが不可欠です。例えば、甲状腺機能低下が原因の場合は、甲状腺ホルモンの補充が必要です。むくみは大切な病気のサインであり、原因を明らかにして適切な治療を選択することが重要です。