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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

アメリカ介護の歴史と未来への展望

コラム2023/12/06

アメリカ介護の歴史と未来への展望

アメリカの介護の歴史は、多様な要因により複雑かつ進化的なものであり、時間とともに社会の変化や医療技術の進歩に合わせて変遷してきました。

アメリカの介護の歴史

19世紀から20世紀初頭にかけて、アメリカの介護は家族や地域社会によって担われることが一般的でした。家族が高齢者や障害者のケアを行い、地域の共同体が支援の一翼を担っていました。しかし、急速な都市化や産業化の進展とともに、家族構造が変化し、高齢者や病気の家族が離れ離れになることが増えました。

1920年代には、アメリカで初めての公的な介護施設である「ハンカー・ヒル・ソサエティ」が設立され、老人の世話をするための施設が始まりました。しかし、これらの施設はあくまで限られた数であり、大多数の高齢者や慢性疾患患者は家庭での介護を余儀なくされていました。

1930年代から1940年代にかけて、大恐慌や第二次世界大戦の影響で社会が大きく変化し、同時に高齢者の福祉に対する意識が高まりました。1935年には社会保障法が制定され、高齢者に対する年金制度がスタートしました。これが、高齢者の経済的な支えとなりましたが、同時に医療・介護に関する体系的な制度はまだ整備されていませんでした。

1965年にはメディケア(Medicare)とメディケイド(Medicaid)が創設され、高齢者や低所得者に対する医療・介護サービスの提供が拡充されました。メディケアは65歳以上の高齢者を対象とし、メディケイドは低所得者や一部の障害者を対象としています。これにより、公的な支援を受けながら入院治療や一部の介護サービスを受けることが可能になりました。

1980年代には、在宅ケアの需要が増加し、訪問看護やホスピスケアが注目されるようになりました。これは、高齢者や慢性疾患患者ができるだけ自宅で生活し、かつ尊厳ある最期を迎えるためのアプローチでした。在宅ケアの強化により、医療・介護の場が施設中心から家庭中心に変わりつつありました。

1990年代に入ると、介護に関する法的基盤の整備が進み、1999年には「オムニバス・バジェット・リコンシリエーション・アクト(OBRA)」が制定され、介護施設での基準が向上しました。また、同時期にはアメリカで初めての家族介護者支援法も導入され、介護者に対する支援が拡充されました。

アメリカ介護の未来

高齢者の増加や慢性疾患患者の増大に伴い、介護の重要性が一層高まっています。テクノロジーの進化も介護に影響を与え、テレヘルスやスマートテクノロジーを活用した介護が導入されています。これにより、患者の健康状態をリアルタイムでモニタリングし、効果的な支援を提供することが可能になりつつあります。

現代においては、アメリカはますます高齢化社会が進行し、医療・介護の分野ではさまざまな問題に直面しています。特に、介護人材の不足や医療費の増大といった問題が浮き彫りになっています。将来的には、アメリカの介護制度は持続可能な形で進化し、高品質でアクセス可能な介護が提供されるようになることが期待されます。