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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

コラム2023/11/29

進行性核状性まひ(PSP)の治療課題と未解明のメカニズム

進行性核状性まひ(Progressive Supranuclear Palsy, PSP)は、神経変性疾患の一つであり、中枢神経系の一部が進行的に損傷することによって引き起こされます。この疾患は進行が速く、特有の症状が現れることで知られています。以下に、PSPに関する治療法、予後、診断の経緯、発症原因についてお伝えます。

治療法

進行性核状性まひには現在特効薬は存在しておらず、治療法は主に症状の管理と生活の質の向上に焦点を当てています。物理療法や作業療法が活用され、患者の運動機能の低下や日常生活動作の困難に対処するために用いられます。これらの療法は、筋力の維持や運動の改善を目指し、患者の生活の質を最大限に維持するのに役立ちます。

薬物療法においては、運動症状や認知症の改善を図るために、抗パーキンソン薬や抗コリン薬が使用されることがあります。しかし、これらの薬物は症状の進行を抑制するものではなく、あくまで対症療法として利用されます。特に、PSPに伴う運動機能の低下や姿勢の不安定性に対しては、薬物療法の効果が限定的であることが指摘されています。

予後

予後に関しては、PSPは進行が速く、平均寿命は発症から数年から約10年程度と言われています。症状の進行に伴い、歩行困難、認知症、視線麻痺などが進行し、最終的には呼吸不全が主な死因となります。ただし、症状の進行速度には個人差があり、いくつかのサブタイプが存在することから、予後も患者によって異なります。

診断の経緯

PSPの診断に至る経緯は、初期には他の神経変性疾患や運動障害との鑑別が難しいことがあります。症状が現れる初期段階では、しばしばパーキンソン病や多系統萎縮症(MSA)と混同されることがあります。診断には臨床的な検査や神経画像検査、または脳の生検が必要な場合もありますが、これらの検査でも確実な診断が難しいことがあります。

典型的なPSPの症状は、垂直の視線麻痺、運動の減退、姿勢の不安定性、認知機能の低下などです。これらの症状が一つ以上同時に現れた場合、PSPの可能性が高まりますが、他の疾患との鑑別診断が重要です。また、PSPの進行に伴い、特有の症状が明確になりやすいため、症状の経過を継続的にモニタリングすることが診断の鍵となります。

発症原因

PSPの発症原因についてはまだ完全に解明されていませんが、神経細胞の異常な蓄積やタウタンパクの異常が関与していると考えられています。タウタンパクは神経細胞内で正常な機能を果たしているが、異常な形で蓄積することが神経変性の原因となる可能性があります。ただし、この機序はまだ十分に解明されておらず、今後の研究が進むことで疾患のメカニズムについての理解が深まることが期待されます。

まとめ

進行性核状性まひ(PSP)は難治性の神経変性疾患であり、現在のところ特効薬は存在しません。治療法は主に症状の管理と生活の質の向上に焦点を当てており、物理療法や作業療法が利用されます。診断には他の神経変性疾患との鑑別が難しいことがあり、症状の進行や継続的なモニタリングが診断において重要です。疾患の原因に関してはまだ不明確な部分が多く、今後の研究が解明に向けて進むことが期待されています。