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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

頑張りすぎに要注意!~介護うつの原因と対策~

コラム2019/10/01

頑張りすぎに要注意!~介護うつの原因と対策~

頑張りすぎに要注意!~介護うつの原因と対策~

 介護を長年続けていく上で、「介護疲れ」は一つのキーワードになってきますね。特に家族が在宅で介護をするケースでは、介護者の身心の負担が大きくなります。疲れが蓄積されると、「介護うつ」として鬱病の症状が現れる場合があります。こういた事態を予防する為には、在宅介護をするご家族に関わる私たちが、介護者の状態を見極める目を持つことが必要不可欠です。そこで今回は、介護うつに関してのご紹介をさせて頂きたいと思います。

介護うつの原因は?

介護うつは何が原因で起こるのでしょうか。「『介護疲れ』が原因でしょう。」そう思った方は、不十分な認識かもしれません。確かに介護による介護疲れが原因なのは間違いありませんが、その介護疲れがどこから来ているのかを考えなければ、介護うつを考える上では不十分と言えます。介護をするご家族の立場に自身を置き換えて想像してみましょう。朝は会社に出勤し、夕方になるとクタクタになって自宅に帰ります。自宅に帰った後は自身の父親の介護をしなければなりません。もちろん休みなどある訳もありません。毎日毎日そんな日々を繰り返します。毎日頑張って介護を続けているにも関わらず、父親の症状はよくなるばかりか徐々に悪化しているように見えます。どうでしょうか?「こんな生活がいつまで続くのだろう?」「本当に父親の為になっているのかな?」そんな気持ちになりませんか?長い期間、家族の介護に携わっていると将来への漠然とした不安を覚えるようになります。認知症があれば、暴言暴力が降りかかる場合もありますね。こういった負担が慢性的に続く事により、介護者が虚無感を覚えるようになると介護うつという形で鬱病の症状が現れてくるのです。また、介護可能な家族が複数いるのにも関わらず、一人に介護の負担が集中すると「どうして自分だけが…。」という不満を招き、介護うつの決定的な要因になる場合があります。その他にも経済的な不安や、肉体的な負担が原因となるケースもあります。全てのケースに共通して言えることは「慢性的」且つ「長期的」な負担が原因であるという事です。

介護うつの症状

では介護うつの症状にはどのような症状があるのでしょうか。一般的に鬱病の初期は本人も周囲の人も気づきにくく、知らないうちに症状が進行してしまうことが多くあります。小さなサインを見逃さない為に、いくつか代表的な症状をご紹介させて頂きます。

◆食欲不振
「鬱病」の代表的な症状の一つ。何を食べてもおいしくないと感じ、食慾が低下します。結果として、体重減少にも繋がります。

◆睡眠障害
こちらも「鬱病」の代表的な症状の一つです。寝つきにくい、何度も目が覚める、長く眠れないなどの症状が現れます。

◆疲労感と倦怠感
すぐに疲れる、体のだるさ、ひどい肩こりや頭痛などの症状が現れます。何をするにも億劫になり、活動意欲が減退し無気力になります。

◆不安感と焦燥感
原因不明の焦りや不安な気持ちが付きまといます。イライラして気持ちが落ち着かなくなったり、人によっては神経質になり騒音や物音がきになるようになります。

◆憂鬱感や思考障害
気分が落ち込んで人との会話を億劫に感じるようになります。それが原因で、周囲の物事に関心が少なくなり一人の世界に入り込むようになります。また思考障害が起きると、頭が働かず仕事効率が落ちたり物事をネガティブに捉えるようになり、自殺願望を抱くケースもあります。このような症状が毎日のように見られ、且つ慢性的に続く場合、介護うつを疑った方が良いかもしれません。「もしかして」と思ったら、医療機関に相談をするようにしましょう。また、介護うつになりやすい人の特徴として、「責任感の強い方」「真面目で几帳面な方」「完璧主義の方」などが挙げられます。このような方が介護者の場合には注意が必要かもしれません。

介護うつの予防策

介護うつを予防するためには原因となる精神的ストレスや身体的疲労を軽減することが重要です。ではその為にはどのような方法が考えられるでしょうか。一番は、介護者の良き相談相手になる事かと思います。家庭の事情を誰かに話すことはなかなか難しい事です。共通の悩みをもつ方のコミュニティーなどに参加していればそういった機会もあるかもしれませんが、独りで悩んでしまっている方も多数見えられます。そういった場合に、一番の相談相手になれるのは実際に現場に介入している私たちなのかもしれません。次に考えられるのはやはり各種サービスの利用でしょう。ショートステイやレスパイト入院、包括の家族サロンなど、介護者の為のサービスを使うことで介護者の精神的、身体的負担を癒すことができます。実際に使わなくても、そういったサービスがある事を介護者の方にお伝えをしておくだけで、「いざとなれば」という拠り所になり精神的に負担を軽減できる可能性があります。

今回は介護うつについてご紹介をさせて頂きました。ご家族が長期的な介護を続けていく為に、介護者を包括的にサポートしていく事が必要不可欠です。小さなことでも報告をし合える関係を作り、早めの対策を取っていく事が求められます。