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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

”精神看護の母” ペプロウから対人関係を学ぶ

コラム2019/09/24

”精神看護の母” ペプロウから対人関係を学ぶ

”精神看護の母” ペプロウから対人関係を学ぶ

皆様はヒルデガード・ペプロウという人物をご存じでしょうか。看護に携わる方は「もちろん知ってる!」という方が多いかと思います。彼女は、ナイチンゲール以降の近代看護における看護学に多大な貢献をしました。精神看護の母と呼ばれるアメリカの看護学者です。今回は、そのヒルデガード・ペプロウについてご紹介をしていきます。(「ペプロウの生涯 ひとりの女性として、精神科ナースとして」バーバラ J キャラウェイ 医学書院)

 ペプロウとは

ヒルデガード・ペプロウは、1909年にアメリカのペンシルベニア州にてポーランドからの移民で労働者階級の両親の元、6人兄弟の次女として生を受けます。彼女の家庭は貧しく、幼少期より病院に住み込みで働くという環境で育った為、幼少期より看護会に携わっていきます。移民であったが故に、優秀であっても迫害や差別の憂き目にあうこともあり彼女が知識人として認められるには相当な努力が必要でした。しかし、彼女はどんな逆境であっても自身の持つ強い責任感によって正義と信念を貫くために行動を起こしていきます。アクティブで優秀であったからこそ、看護という仕事に厳しく、看護を疾患中心の考えから人間中心の考えに変え治療の一形態として再定義しようと努めました。その結果、「精神看護の母」と呼ばれるまでの人物となり、現代看護学黎明期における理論家の一人、近代看護学に多大な貢献をした看護学者として現代まで広く知れ渡る人物となっていきます。また彼女が提唱した「対人関係理論」は「ペプロウ看護論」とも呼ばれ、彼女の代名詞として非常に有名ですね。

 ペプロウ看護論とは

ではペプロウ看護論とはどういった理論なのでしょうか。対人関係理論とも呼ばれるこの理論は一言で言うなら人と人が互いに尊重し合い、お互いに成長していくことを理論化したものです。ペプロウが言うこの相互作用は精神看護では、看護師が一方的に看護サービスを提供するだけではなく患者様からも看護師に作用し成長や気づきをくれているという考え方です。ペプロウは、患者様と看護師の関係を治療的な人間関係ととらえ、看護を有意義な治療的・対人的なプロセスであると位置づけました。

 関係発展の4つの段階

ペプロウが考える患者様と看護師の関係発展過程には4つの段階があります。

第1段階 方向付け

患者と看護者が出会う時期であり、お互いが緊張状態にある。患者は切実なニードを持っており、健康問題を解決し始める段階。

第2段階 同一化

患者が自分のニードの求めに応じてくれそうな信頼できる看護者を選んで反応する時期。自分の健康問題に興味を示し、看護者と共に解決しようとする準備段階。

第3段階 開拓利用

患者が自分に提供されるサービスを十分に活用する段階。自分の健康問題を整理し、よりよい問題解決の方向を目指す。

第4段階 問題解決

患者の健康問題が解決され独り立ちの力を強めていく。病気が完全に治るのではなく、共存できる患者の成熟さが備わった段階。

練習問題

ペプロウ看護理論に関する問題は過去の看護師国家試験問題でも出題されています。一問だけご紹介をさせて頂きます。

第106回 看護師国家試験 午前問題 問064 一般問題

Aさん(68歳、女性)は、胃癌のため入院した。入院初日に「夫も癌になって、亡くなる前に痛みで苦しんでいました。私も痛みが怖いんです。」と言った。看護師は、Aさんが夫のように苦しむことへの恐怖や不安があることがわかり、Aさんとともに対処法について考えた。この時点での患者・看護師関係の段階はどれか。

1. 方向づけ 2.同一化 3.開拓利用 4.問題解決

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解答は、1ですね。

患者は自身の不安を表に出し、看護師は問題解決に向けて患者と共に考えている。これは患者の抱えている問題を認識して共有し、解決に向かって歩き始めている方向づけの段階と考えられます。

皆様正解できましたでしょうか?(^-^)b

今回は精神看護の母、ヒルデガード・ペプロウについてご紹介をさせて頂きました。ペプロウの看護に対する基本的な理念、考え方は即効性を求める疾患中心の看護を人間中心の看護へと移行させ、看護師独自の役割を明らかにしました。国際看護論などを学ぶのが当然の時代となった現代においても、看護学基礎課程や看護概論の中で必ず彼女が登場するのは、彼女の功績の大きさ、考え方の重要性を物語っています。経験が蓄積された今だからこそ、学び直すことで、新しい気付きや問題解決の糸口が発見できるかもしれません。