コラム2023/08/28
パーキンソン病患者の睡眠障害と対応策~QOL向上への道~
パーキンソン病患者には睡眠障害が多く見られ、これが生活の質(QOL)に重大な影響を及ぼします。今回は、パーキンソン病患者の睡眠障害について、主要な症状とそれに対する対応策に焦点を当てます。以下に、不眠、レストレスレッグス症候群、REM睡眠行動異常症、睡眠時無呼吸症候群、日中の過度の眠気について詳しく説明します。
不眠
不眠はパーキンソン病患者の睡眠障害の中で最も一般的です。不眠の原因は様々で、病患進行に伴う睡眠構造の変化、睡眠覚醒系の障害、薬物の関与、排尿障害(夜間頻尿)の関与、うつ症状、認知症、既存の不規則な睡眠パターン、レストレスレッグス症候群(RLS)、REM睡眠行動異常症(RBD)、睡眠関連呼吸障害などが考えられます。不眠のタイプには入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒があり、特に中途覚醒が多いとされています。医療・福祉関係者が直接的に患者の睡眠状態を観察するのは難しいため、入院時に夜勤の看護師がその役割を担うことが多いです。
不眠の対応策
不眠への対応は原因により異なります。まず、夜間の状態を詳しく観察し、原因を特定します。日中は十分に活動し、日光を浴びることが重要です。就寝前にアルコール、カフェイン、喫煙、飲水を避け、適温で静かな寝室を維持することが環境調整の一環です。精神症状が出現する場合は、部屋を明るくし、幻視を誘発しそうな要因を除去します。
レストレスレッグス症候群(RLS)
RLSは夜間の安静時に下肢に不快感を生じ、無性に動かしたくなる症状です。これが睡眠障害の要因となり、QOLに大きな影響を与えます。下肢の運動やマッサージで不快感が一時的に軽減することがあります。RLSの病因はまだ明確ではありませんが、脳脊髄液中の鉄不足によるドパミン機能障害が関与している可能性があります。
レストレスレッグス症候群(RLS)の対応策
RLSの対応策としては、薬物療法があります。看護師は患者の症状を詳細にアセスメントし、適切な治療法を提供する役割を果たします。
REM睡眠行動異常症(RBD)
RBDは夜間に大声をあげたり、手足をバタバタ動かしたりする症状を示し、これに合わせて夢を見ることがあります。暴力行為や危険な行動に発展することもあり、家族にも影響を及ぼします。RBDはパーキンソン病と関連があり、運動症状の発現前に見られることもあります。
REM睡眠行動異常症(RBD)の対応策
RBDの対応策は、ベッド周りに危険なものを置かない、けがをしないようにベッドの周りにクッションなどを置く、家族に患者と同室で寝てもらい、観察を依頼するなどの工夫が必要です。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は上気道の閉塞や中枢性の呼吸障害により、いびきや低呼吸がみられます。パーキンソン病患者にも合併することがあり、重症例では突然死のリスクがあるため、看護師の観察が非常に重要です。
睡眠時無呼吸症候群の対応策
睡眠時無呼吸症候群の治療にはCPAP療法が適用されることがあります。また、一部の薬物治療も検討されます。
日中の過度の眠気
日中の過度の眠気は約15~50%のパーキンソン病患者に影響します。モダフィニルなどの治療薬も存在しますが、その使用には制約があります。この症状は、患者の日中の活動に大きな影響を及ぼすため、生活指導が必要です。
パーキンソン病患者の睡眠障害に対処するためには、症状の正確な観察、原因の特定、適切な治療法の提供が必要です。看護師や家族のサポートが不可欠であり、QOLを向上させるための重要な一環です。
パーキンソン病患者の睡眠障害に対処するためには、症状の正確な観察、原因の特定、適切な治療法の提供が必要です。看護師や家族のサポートが不可欠であり、QOLを向上させるための重要な一環です。
まとめ
睡眠障害はパーキンソン病患者によく見られ、QOLに大きな影響を及ぼします。不眠、レストレスレッグス症候群、REM睡眠行動異常症、睡眠時無呼吸症候群、日中の過度の眠気などがあります。重要なポイントは、症状の観察と原因判明です。治療法は多様で、薬物療法や環境調整が含まれます。看護師の役割は大きく、患者の状態を詳細に監視し、適切な対応を行うことが不可欠です。また、家族にも支援と情報提供が必要です。