コラム2023/08/25
パーキンソン病患者のケアにおける嚥下障害と栄養管理の重要性
パーキンソン病患者の健康管理において、嚥下障害と適切な食事形態の選択は極めて重要です。本要約では、嚥下障害のスクリーニング方法、適切な食事形態、症状の変動への対処、疲労を踏まえたアセスメント、姿勢異常への対策、血圧の管理、そして栄養のアセスメントに焦点を当てます。これらの要因はパーキンソン病患者の生活の質と健康に大きな影響を与えるため、看護師や医療関係者による適切なケアとアセスメントが不可欠です。
嚥下障害のスクリーニングと食事形態の選択
パーキンソン病患者にとって、嚥下障害のスクリーニングと適切な食事形態の選択は生命に関わる重要な事項です。嚥下障害の早期発見は重要で、スクリーニングにはいくつかの方法があります。まず、ホーン・ヤール重症度分類、低い体格指数、食物や飲み物の口腔内での保持が困難といった判別指標があります。さらに、自己回答式質問票である嚥下障害質問票(SDQ)も有用です。SDQは日本語版が存在し、患者の状態を評価する際に役立ちます。
適切な食事形態の選択も重要です。パーキンソン病により食物の送り込みが悪く、嚥下反射が遅い患者には、とろみをつける食事補助剤が有効とされています。また、パーキンソン病患者の多くが間食をしているため、看護師は3食だけでなく、間食の食事形態の評価にも注意を払う必要があります。
症状の変動への対処と疲労を踏まえたアセスメント
パーキンソン病の特徴の1つは、症状の日内変動です。オンオフ現象やすり減り現象により、患者の状態が急激に変化することがあります。このような変動を考慮して、看護師は1回の嚥下機能評価だけでなく、1日を通してタイムリーに評価していく必要があります。
また、パーキンソン病患者は疲労しやすい傾向があります。食事時間が長い患者では、食事開始時と終了間際で食事動作や嚥下状態が変化することがあります。したがって、食事の前半と後半での評価も考慮する必要があります。疲労により食事動作への影響がある場合、休息のタイミングや分割食を提案することで対応できることもあります。また、食事前の運動や活動内容も評価対象とし、個別のケアプランを立てるのが大切です。
姿勢異常への対策と血圧の管理
パーキンソン病による姿勢異常は病期の進行とともに増加する傾向があります。姿勢の傾きは嚥下や食事動作に影響を及ぼすため、看護師は食事時に姿勢を評価し、調整が必要な場合には椅子の座面角度や高さ、クッションを用いたポジショニング、机の位置と高さを個別性に応じて調整します。姿勢異常が強い場合、他動的な姿勢調整を目的としたストレッチなども考慮されます。
さらに、食事性低血圧や起立性低血圧への注意も必要です。これらの症状はパーキンソン病患者にとって特にリスクが高いです。食事場面において食後の食事性低血圧や、椅子からの立ち上がりによる起立性低血圧は転倒のリスクを高めます。看護師は意識レベルの低下が見られる場合には、ベッドサイドでの食事や分割食などの対策を講じます。
栄養のアセスメントと管理
最後に、パーキンソン病患者の栄養状態を評価し管理することも重要です。BMIが低いことは嚥下障害を判別する要素の一つであり、エネルギー消耗が高いため、摂取カロリーと消費カロリーのバランスを考慮する必要があります。BMI、体重変動、生化学検査結果からの適切なアセスメントと、必要に応じて栄養補助食品の提案が求められます。
まとめ
パーキンソン病患者の嚥下障害や食事形態の選択、症状の変動、疲労、姿勢異常、血圧管理、栄養のアセスメントは、看護師や医療関係者による適切なケアとアセスメントが不可欠です。これらの要因を考慮し、個別のケアプランを立てることは、パーキンソン病患者の健康と生活の質を向上させる鍵です。