コラム2023/07/29
非がん患者様への緩和ケアの重要性についてvol.2
緩和ケアは、生命を脅かす疾患に苦しむ患者とその家族を対象とし、WHOによれば生命を脅かす疾患を持つすべての人々に緩和ケアを受ける権利があるとされています。
2014年には、WPCAとWHOが世界の緩和ケアニーズに関する製告を発表し、近代の緩和ケアにおいて理解すべき3つのポイントを示しています。
緩和ケアにおいて理解すべき3つのポイント
1.先進国では、主な死因は循環器疾患とがんです。
これらの疾患が進行するにつれ、多くの患者が痛み、倦怠感、抑うつ、呼吸困難などの症状で苦痛を感じています。
2.終末期のCOPDや腎不全、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経疾患、そして認知症などの疾患の患者に対しても、緩和ケアは効果的な介入として実証されています。
3.緩和ケアとは、患者の希望に焦点を当てながら、症状の緩和を含む専門知識、コミュニケーションなどのスキルを持つ専門家が、一人ひとりの患者に対して全人的なアプローチを取り入れることを意味します。
この緩和ケアは、革新的な医療と社会政策のあり方を提供し、患者の心身のケアと生活の質を向上させる重要な手段となっています。
日本での調査結果
2020年の日本における遺族調査では、がん以外の疾患の患者でも約40%が心身の苦痛を緩和できていたことが示されています。
また、がん患者と非がん患者の間では、最期の療養場所の希望に関する話し合いが非がん患者の方が少ないことも明らかになりました。
世界でのニーズもかわってきている
世界的に人口動態や疾病構造の変化が起きており、非がん患者におけるさまざまな苦痛や困難が認識され、社会のニーズも変化しています。
したがって、今まで主にがん患者を中心に発展してきた緩和ケアは、非がん患者も含めて、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族を対象に、普及・発展する必要があります。
がん患者と非がん患者の間には類似点と相違点
がん患者と非がん患者の間には類似点と相違点があります。
両者とも終末期において痛み、倦怠感、呼吸困難、不安などの身体的・精神的症状を感じています。
一方で非がん患者は、身体的な症状に加えて社会的・心理的な症状の程度がより高い傾向があります。
それぞれの疾患に応じて機能低下や死の前触れが異なることも考慮すべき点です。
まとめ
緩和ケアは、がん患者だけでなく、心不全・COPDなどの器官不全患者、認知症・フレイル患者などにも適用され、患者と家族が最期の時期をより穏やかに過ごせるようなケアが必要です。これらの疾患においても、患者の心理的なサポートや実存的な問題に対応することが重要とされています。当院でも非がん患者様への緩和ケアを実施している症例もあるため、悩んだ際は一度ご相談ください。