コラム2023/06/19
明日への支え、認知症の方々のための障害手帳取得について
認知症の方は手帳取得できるのだろうか。こんな疑問を感じたことがある方は少なくないはず。
本日は認知症と障害手帳取得に関してお話します。
身体障碍者手帳と精神障害手帳
まずは身体障碍者手帳と精神障害者保健福祉手帳の交付要件等に関しておさらいしてみましょう。
身体障碍者手帳
1.概要
身体障害者福祉法に定める身体上の障害がある者に対して、都道府県知事、指定都市市長又は中核市市長が交付する。
根拠:身体障害者福祉法第15条
2.交付対象者
身体障害者福祉法別表に掲げる身体上の障害があるもの
別表に定める障害の種類(いずれも、一定以上で永続することが要件とされている)
① 視覚障害
② 聴覚又は平衡機能の障害
③ 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
④ 肢体不自由
⑤ 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
⑥ ぼうこう又は直腸の機能の障害
⑦ 小腸の機能の障害
⑧ ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
⑨ 肝臓の機能の障害
3.障害の程度
法別表に該当するかどうかの詳細については、身体障害者福祉法施行規則別表第5号「身体障害者障害程度等級表」において、障害の種類別に重度の側から1級から6級の等級が定められている。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。精神障害者の自立と社会参加の促進を図るため、手帳を持っている方々には、様々な支援策が講じられています。
何らかの精神障害(てんかん、発達障害などを含みます)により、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方を対象としています。 対象となるのは全ての精神障害で、次のようなものが含まれます。
- 統合失調症
- うつ病、そううつ病などの気分障害
- てんかん
- 薬物依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
- そのほかの精神疾患(ストレス関連障害等)
ただし、知的障害があり、上記の精神障害がない方については、療育手帳制度があるため、手帳の対象とはなりません。(発達障害と知的障害を両方有する場合は、両方の手帳を受けることができます。)
また、手帳を受けるためには、その精神障害による初診日から6か月以上経過していることが必要になります。
精神障害者保健福祉手帳の等級について
等級は1~3級まであります。
1級>精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級>精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級>精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
認知症の方々は手帳取得は可能か
結論から申し上げますと、身体障碍者手帳は状況次第で取得可能、精神障害者保健福祉手帳は取得可能です。
まず、身体障碍者手帳に関してですが、脳血管性認知症などで手帳交付を受けられる程度の肢体不自由等があれば取得が可能となります。
次に精神障碍者保健福祉手帳に関しては、ほとんどの方が対象となると考えられます。
認知症の方を診察する際、一人で生活した時に適切な食事・身辺の清潔保持・金銭管理や計画的な買い物・規則的な通院や服薬・適切な意思伝達や協調的な人間関係・安全保持や危機対応・社会的な手続きや公共施設の利用・社会情勢や趣味や娯楽への関心・文化社会活動への参加等々ができるかどうかを評価します。
認知症は認知機能の低下のために生活や職業に支障が出た場合に診断されます。
先ほど精神障害者保健福祉手帳の等級の中でも一番軽い3級をみてみると、
3級>精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のものとされています。
当然認知症の方は何らかの生活の支障があるため、対象となる方はかなり多くなりそうです。
まとめ
今回は認知症と障害手帳取得に関してお話をしました。
精神障害者保健福祉手帳や身体障害手帳を取得できれば患者様にもメリットとなる部分が出てくるかもしれません。