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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

在宅での褥瘡ケアについて

コラム2023/05/08

在宅での褥瘡ケアについて

在宅での褥瘡ケアは病院のそれと比べると様々な工夫が必要となる場合が多くなりますね。

本日は在宅での褥瘡ケアのポイントをお伝えさせていただきます。

在宅での褥瘡ケアの難しさ

在宅での褥瘡ケアは病院でのケアと比べると難しい点がいくつか存在します。

体位変換

病院では看護師が定期的に患者の元に訪れ、2時間おきに体位変換を行うことが可能ですが、在宅で家族がそれと同じことを行うことは困難な場合が多くなります。

創部の処置

創部の処置も体位変換と同様、看護師が定期的に患者の元に訪れ創部の処置を行うことが可能です。一方、在宅では家族が可能なケースはやはり少なく、ヘルパーも傷の処置を行うことはできません。そうなれば、その部分を担当するのは医師もしくは訪問看護師ということになりますが、医師が複数回訪問することは困難なため、訪問看護ステーションに対して特別指示書を発行し、1日複数回、週4日以上の訪問を可能とする必要性がでてきます。ちなみに、「真皮を超える褥瘡」であれば月に2回まで(28日分)の特別訪問看護が可能となります。

ただし、このような状態ではデイサービスやショートステイといったサービス利用が困難となったり、処置のためのコストが大きくなることも考えなければなりません。

在宅における皮膚欠損用創傷被覆材・非固着性シリコンガーゼの保険適用

2012年度の診療報酬改定を機に、在宅での療養をおこなっている通院困難な患者において、いずれかの在宅療養指導管理料を算定していること、さらに皮下組織に至る褥瘡(DESIGN分類D3、D4およびD5)を有sるう患者に対して使用した場合、あるいは在宅難治性皮膚疾患指導管理料を算定している患者に対して皮膚欠損用創傷被覆材・非固着性シリコンガーゼを使用した場合には、詳記が必要となるものの、3週間を超えての処方が可能となりました。

褥瘡の予防

褥瘡予防においては、褥瘡のできやすいケースを重点的に予防することが大切です。在宅では一旦、褥瘡が悪化してしまうと治るまでにとても長い時間と医療介護の手間がかかるからです。褥瘡予防については様々なアセスメントツールが開発されていますが、今回はOHスケールを紹介します。

OHスケールは統計的に割り出した4つの因子のみで褥瘡リスクを判定するものです。自力体位変換の可否、病的骨突出の有無、浮腫の有無、関節拘縮の有無の4項目のみで判定します。これらの合計1~3点を軽度リスク、3~6点を中等度リスク、7~10点を高度リスクとして、リスクの高いケースにはより体圧分散能力の高い体圧分散マットなどのマットレスの導入が推奨されています。

褥瘡の経過の中で考えるべきこと

褥瘡ケアはその時期によって治癒までの期間や方向性が異なってきます。治癒迄の期間は褥瘡の深さによって異なります。褥瘡が真皮内にとどまっている場合では、正しくケアができれば2~3週間程度で治ることが多いですが、真皮を超えてくる場合は治るまでに数か月必要になります。

真皮を超えるような深い褥瘡に限った話をすると、その中でも時期によって局所ケアの方向性が異なってきます。

褥瘡が発生した直後の時期には、日ごとに創の状態が変化するため褥瘡がどれくらい進行しているのかを見極めて、感染源となりうる壊死組織などの除去のためにデブリードマンを行うことも大切です。

しかし、褥瘡ケアでは局所療法以外のことも考える必要があります、まずは直接的な原因である応力の除去です。応力の除去のためには体圧分散寝具の使用や適切なポジショニングが重要です。寝具の使用についてはケアマネジャーと福祉用具の方、ポジショニングについては訪問看護が家族、ヘルパーに指導を行うなど役割分担をしながら行っていく必要があります。

また、栄養面でのアプローチも大切です。寝たきり患者は食事を十分に摂取できず低栄養であることが多く、摂取カロリーの維持や必要とされるビタミンや微量金属の投与も考慮していく必要があります。食事量が少ない場合には、ラコールやエンシュアリキッドといった経腸成分栄養剤、亜鉛製剤の投与なども必要となることがあります。嚥下に問題があれば口腔ケアや摂食嚥下リハを導入することも考えなければなりません。

最後に、在宅での褥瘡ケアは医師、看護師、ケアマネジャー、薬剤師、ヘルパー、歯科医師、歯科衛生士、栄養士、デイサービスなどの施設職員など多職種での連携で改善を目指していく必要があることは忘れてはいけません。医師が連携の障壁とならないよう皆が意見を言えるような関係づくりをしていくことも重要です。特に、局所療法に関しては医師と訪問看護師との連携が重要となります。

まとめ

今回は在宅での褥瘡ケアについておさらいをしました。まずは褥瘡を作らせないことが大切ですが、ひとたびできてしまったときは多職種連携で支えていく必要があるためフラットな意見交換ができるような関係づくりも重要となってくるため、医師の褥瘡ケアへの理解度も重要となってきますね。