コラム2023/04/17
呼吸困難に対しての酸素投与
呼吸困難とは
呼吸困難とは、呼吸時の不快な主観的な感覚で、客観的な数値で表すことができない症状です。つまりは、患者が「息苦しい」と感じることが“呼吸困難”で、「息苦しい」の訴えが診断基準になります。
ちなみに、「呼吸不全」は十分な呼吸ができていない状態を指しますが、“低酸素血症(PaO2≦60 TorrまたはSpO2≦90%)”という客観的指標があります。
呼吸困難=呼吸不全とはならず、呼吸不全があっても呼吸困難を感じないことはありえます。つまり、呼吸困難は主観的な感覚で評価するしかないということです。
酸素投与
呼吸困難に対して、評価を行い原因治療をしていくのか、またメリット、デメリット、患者自身の考え方や信条にも配慮して方向性を決めていく必要がありますが、原因治療が困難な呼吸困難の場合には、症状緩和の対処療法を検討することになります。呼吸困難を緩和する対処のひとつとして「酸素投与」が挙げられます。
低酸素血症を伴う呼吸困難に対して酸素投与は非常に有効です。この場合、酸素投与による低酸素状態の改善とともに呼吸困難が改善します。また在宅でも在宅酸素療法により酸素投与は可能ですが、酸素濃縮器を使用する場合には機械の限界があることには注意しなければなりません。最大で約6ℓ/分 以上の酸素投与が必要な場合は十分な緩和効果が期待できません。
また、低酸素血症がない呼吸困難に対しての酸素投与に関して、2016年版のガイドラインでは酸素以外の気体の吸入と比較して呼吸困難を改善する根拠に乏しいため酸素吸入を行わないことを推奨しています。しかし、実際には低酸素血症を伴わない呼吸困難に対して酸素投与が有効な場合もあるようです。これは酸素投与というよりも気体を吸入することで鼻腔内で新鮮な気流を生み出すことによる呼吸困難改善効果や酸素吸入という行為に対して安心感を感じたためと考えられます。
いくつかの研究では気体の吸入そのものは呼吸困難を改善することは知られているため、気体の吸入手段として酸素投与をすることは否定されません。ただし、保険診療においては低酸素を伴わない呼吸困難に対しての在宅酸素療法は保険適応外です。
低酸素血症を伴わない呼吸困難に対しての酸素吸入については慎重な判断が求められますが、低酸素血症がない場合でも呼吸困難が改善する場合には酸素吸入を検討することはできます。
まとめ
酸素投与を選択するかどうかに関しては、ケースバイケースの判断が必要となります。
主観的な症状の訴えがベースとなるため、訴えを聞いた場合にはすぐに医師へ情報共有をすることが大切です。