コラム2023/02/20
重度認知症患者の客観的苦痛評価法について
重度の認知症を有する患者は、自分がどれくらい痛みを感じているのかを言葉で伝えることが難しくなります。
その為、重度の認知症の苦痛評価はおもに観察による評価法が用いられます。
主観的評価法は不適切
重度の認知症患者は言語でのコミュニケーションが困難となります。
NRS、VAS、VRSは利用できません。(※NRS、VAS、VRSはいずれもMini-Mental State Examination(MMSE)が18点以上の軽度の認知機能低下患者において使用することが可能であることが示されています。NRSとVRSは、さらに10~17点の中等度の認知機能低下患者においても使用が可能で、認知機能低下患者においてはNRSまたはVRSを用いるのがよいとされています。)
利用すべきは客観的評価法
海外では専門職の観察に基づく客観的評価法が数多く開発されています。
DOLOPLUS-2 Scale
2001年にフランスで開発され、有用性について最も包括的に検証されているスケールです。
「身体的項目」5つ、「精神運動項目」3つ、「精神社会的項目」2つの10項目について0~3点で数値化(最高30点)し、5点をカットオフポイントとしています。
※カットオフポイント(カットオフ値)とは、病態を識別するための検査・測定に用いられ,基準範囲を基本として正常とみなす範囲を決めるとき,その範囲を区切る値のことを意味します。 )
PAINAD (pain assessment in advanced dementia scale)
2003年にアメリカで開発され、有用性の検証は少ないものの、簡便性を評価されて海外では多く用いられているスケールです。
呼吸状態や顔の表情などを0、1、2の3段階で数値化し評価します。
Abbey pain scale
2004年にオーストラリアで開発され、痛みの程度と種類を同時に評価するのが特徴です。看護師や介護職の方が利用できるよう開発されており信頼性・妥当性も高いため有用性も報告されています。
発声、表情、ボディーランゲージの変化、生理学的変化、行動の変化、身体的変化の6項目で評価し、それぞれについて「なし」、「軽度」、「中等度」、「重度」で評価します。
まとめ
在宅においては、重度の認知症と癌を併発しているケースも多く、そういった患者のがん疼痛マネジメントにおいて、痛みの客観的評価は非常に大切になってきます。
中等度~重度の認知症患者の苦痛評価は容易ではありませんが、チーム内でスケールを共有し、標準化できれば疼痛の変化に細やかに気付いてあげられるようにもなりケアの質の向上につながります。
ご興味のある方は本日ご紹介した評価法の詳細をぜひ調べてみてください。