コラム2023/01/11
“痛み”について
がん疼痛マネジメントについて
がん疼痛の緩和を目指す際、患者や家族との関わりについて、我々は以下の点に気を付けなければなりません。
日常のケアにおいては常に痛みについて患者と話し合うように心がけ、患者が自身の痛みについて気軽に訴えられるような環境を作ってあげることで、患者に痛みを我慢させないようにする必要があります。
そうすることで、早くから痛みに対して対応することができます。
また、いざ医療用麻薬を開始するときにも、安易に開始するのではなく患者や家族の不安等に配慮し丁寧に対応することが必要です。
痛みの評価
WHOでは、がん疼痛マネジメントにおいて、第1~第3目標を設定しています(痛みによる睡眠障害がない、安静時に痛みがない、体動時に痛みがない)。
目標が達成されているかどうかについては痛みについて適切に評価が行われなければきちんとした判断ができません。
痛みの分類、性状
痛みは大きく、侵害受容性疼痛と神経受容性疼痛の二つに分類され、更に、侵害受容性疼痛は、内臓痛と体性痛に分けられます。
侵害受容性疼痛(内臓痛)
性状は腹部腫瘍の痛みなど、局在があいまいで鈍い痛み(ズーンと重く鈍い痛み)です。
侵害受容性疼痛(体性痛)
性状は骨転移など局在がはっきりした明確な痛み(ズキッとする明確な痛み)です。
神経受容性疼痛
性状は神経叢(しんけいそう)や脊髄の領域に感じる知覚過敏・鈍麻や電撃痛(ビリビリ電気が走る、ジンジンする痛みがある)です。
痛みの強さ
痛みの強さを評価する方法にはnumerical rating scale(NRS)、visual analogue scale(VAS)、verbal rating scale(VRS)があります。
numerical rating scale(NRS)
「症状が全くないときを”0”、今まで経験した一番強い痛みを”10”として、今はどれくらい痛みますか?」と聞いて痛みの強さを評価します。
患者さんの自己申告なので、「いつでも、どこでも、だれでも」評価することができます。
visual analogue scale(VAS)
長さ10cmの黒い線(左端が「痛みなし」、右端が「想像できる最大の痛み」)を患者に見せて、現在の痛みがどの程度かを指し示す視覚的なスケールです。
左端から患者の指したところまでの距離を測定して痛みの強さを評価します。
NRSと比べて、好きな数字嫌いな数字などに左右されないというメリットもありますが、長さを測る定規やメジャーが必要になります。
verbal rating scale(VRS)
「今の痛みを言葉で表現すると、どれに当てはまりますか?」と聞き、「痛みなし」、「少し痛い」、「痛い」、「かなり痛い」、「耐えられないくらい痛い」から選んでもらいます。
数値ではなく、言葉による表現で評価します。
NRS、VAS、VRSはいずれもMini-Mental State Examination(MMSE)が18点以上の軽度の認知機能低下患者において使用することが可能であることが示されています。
NRSとVRSは、さらに10~17点の中等度の認知機能低下患者においても使用が可能で、認知機能低下患者においてはNRSまたはVRSを用いるのがよいとされています。
(※日本緩和医療学会「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2010年版」より引用)
痛みのパターン
痛みのパターンは大きく、「1日中痛い」(持続痛、持続痛+突出痛)、「ときどき痛くなる(突出痛)」の二つに分類されます。
1日中痛い(持続痛)
常に同じ痛みが続き、痛みがなくなることがない
一日中痛い(持続痛+突出痛)
常に同じ痛みが続き、さらに突然痛みが強くなることがある
ときどき痛くなる(突出痛)
普段は痛みがないが、ときどき痛みが出る
鎮痛薬の投与に関して
痛みを緩和するために鎮痛薬の投与を必要とする際、WHOは以下の5点を考慮する必要があるとしています。
- By mouth 経口的に
- By the clock 規則正しく
- By the ladder 疼痛ラダーに沿って効力の順に
- For the individual 患者ごとに個別的な量で
- With attention to detail 細かい配慮を
まとめ
介護従事者が協力し合い管理していくことが必要になるため、今回お話した痛みの評価を知識として知っていればチーム内の共通認識として患者の痛みを共有することができチーム医療の質の向上につながります。
ちょっとした相談をする際にも、どれくらい痛いのか、どう痛いのか、どんな痛みのパターンなのかを言語化して伝えられると便利ですよね。