コラム在宅医療の基礎知識2022/11/02
在宅での酸素療法について
酸素療法の必要な患者さんが、在宅で療養生活を続ける為に、自宅でも酸素吸入をすることができます。
これを在宅酸素療法(HOT)といいます。
現在、全国で約15万人の方がHOTを受けています。
HOTを開始することで、多くの患者さんは自覚症状が緩和されるとともに、生活の質も大幅に改善します。
息切れしてベッド上から動くことが難しかった方が、携帯用酸素ボンベを持って、近所に買い物に行く等ということができるようになります。
また、肺や心臓への負担が減少することで、病気の進行が抑制されるとともに、入院回数や入院期間も減少、健康寿命や生存期間も延長することが分かっています。
在宅酸素療法に必要なものは、次の3つです
酸素濃縮器
入院中に酸素を吸うときは、壁からチューブが伸びて来ます。
自宅ではどこから酸素を供給するのでしょうか? 答えは「部屋の空気」です。
在宅で酸素を利用するために、よく使われているのが「酸素濃縮器」という機械です。この機械は、部屋の空気(酸素濃度21%)を吸い込み、酸素濃度を90%にまで濃縮できます。
他にも液体酸素を使う方法、酸素ボンベを使う方法などがありますが、酸素濃縮器は管理が簡単なので、よく使用されています。
酸素濃縮器は家庭用のコンセントに差し込んで使う電気製品です。1か月の電気代はフル稼働させた場合で1000円程度です。騒音は冷蔵庫と同等程度で、わずかしかかかりません。
カニューレ・マスク
酸素濃縮器で作られた酸素は、チューブを通して、体内に送られます。鼻から酸素を吸入する場合には、カニューレを使用します。ただ、鼻の粘膜はデリケートなので、鼻からはあまり大量の酸素を吸入することができません。
1分間に3リットルを超える酸素を投与する場合には、マスクを使って、鼻と口の両
方から酸素を投与します。
携帯用酸素ボンベ・デマンドバルブ
外出する場合には濃縮器を持って歩くことはできません。
このような場合、携帯用の酸素ボンベを使用します。
酸素濃縮器は電気で動くものなので、停電すると動作が止まってしまいます。
そのような場合の備えとしても、携帯用ボンベは手元に置いておくのが安全です。
ボンベの中の酸素は有限です。できるだけ長持ちさせるように「呼吸同調器」をボンベのバルブに取り付けることができます。
これを付けておけば、息を吸ったときにだけ酸素が供給され、無駄遣いを防げます。
在宅酸素療法は健康保険が適用されます。
1か月あたりの費用は1割負担の方で7700円程です。
訪問診療を受けられている方は診療費と併せて15000円程です。
酸素療法をしないことで入院する可能性は高くなりますので、必要な方は医師の指示に従い正しく使用することが大切です。