コラム2019/08/15
2021年度介護保険法改正の論点
2021年度介護保険法改正の論点
2021年度に介護保険制度の見直しが行われます。次回の改定で大きな論点となるのが、「ケアプラン」の有料化などサービス利用者の自己負担導入です。財務省や経済界などが繰り返し実現を求めてきた経緯があり、さまざまな意見もある中、ポイントを整理したいと思います。
1.ケアプラン有料化
財務省の立場
介護保険給付費は2018年度で10・7兆円に上り、25年度は15・3兆円、40年度には25・8兆円に急増すると見込まれています。このため財務省は給付費の抑制を図るべきだとの立場から、ケアプランの有料化を求めています。
日本介護支援専門員協会の立場
ケアマネジャーの団体「日本介護支援専門員協会」の幹部らは、「ケアプラン作成は介護サービスを受けるための入り口だ。従来通り保険料で全額負担すべきだ」との意見を示しています。
ケアプランが有料化されたら…
ケアプランは本人や家族でも作成できますが、ほとんどがサービスに詳しいケアマネジャーに依頼しているのが現状です。作成費用は要介護度によって異なり、高額な場合は月額約1万4千円かかりますが、誰もが公平にサービスを受けられるよう、現状、自己負担はありません。仮に1割負担になると、利用者は月1400円程度を支払う必要があります。協会幹部は「年金暮らしの高齢者が支出できるお金は限られている。有料化すれば利用控えが心配される」とケアプランの有料化に反対の意を唱えています。また、与党内にも「低所得者がサービスを受けられず、重症化を招きかねない」と慎重な議論を求める意見もあります。
2.利用者自己負担割合2割
利用者の自己負担割合は00年に制度が始まってから所得水準にかかわらず1割が続きましたが、15年8月から、年収280万円以上(単身で年金収入だけの場合)の人は2割、このうち現役並みに所得が高い一部の人は18年8月から3割になりました。とはいえ現状は利用者の約9割が1割負担です。原則2割負担について「認知症の人と家族の会」は、次のような意見を表明しています。
「2割になるということは自己負担が倍増するということ。私たちの生活と介護が立ち行かなくなることは明らか」と主張。政府が新たにまとめた「大綱」で「共生」の理念を掲げていることに触れ、利用者の負担を増やし、サービスを削減するという方針の矛盾点を挙げています。また、「消費税の10%への増税分はすべて社会保障に充てる、としながら利用者の負担を倍にするのは全く道理に合わない」、「原則2割負担は絶対反対」と強調しています。
まとめ
今回は、2021年度介護保険法改正の論点について、整理致しました。当院としても、多くの介護護関係の方と連携させていただいており、次回の改定には注視しています。介護関係団体などは強く抵抗していく構えを示しており、財務省なども持論を変えないとみられ、最終的には政治判断に委ねられます。政府は秋以降に調整を本格化し、今年中に結論を出す予定です。