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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

指定難病「進行性核状性まひ」

コラム2022/09/27

指定難病「進行性核状性まひ」

「進行性核状性まひ」はどんな疾患??

脳の中の大脳 基底核 、脳幹、小脳といった部位の神経細胞が減少し、転びやすくなったり、下方を見ることがしにくい、しゃべりにくい、飲み込みにくいといった症状がみられる疾患です。初期にパーキンソン病とよく似た動作緩慢や歩行障害などがみられて区別がつきにくいこともありますが、パーキンソン病治療薬があまり効かず、効いた場合も一時的のことが多く、経過がより早く進む傾向があります。

患者数は人口10万人あたり10~20人程度と推測されており、40歳以降に発症し、50歳代から70歳代に多く発症します。

利用できる制度

指定難病である「進行性核状性まひ」と診断を受けた場合には、療養のための様々な制度を利用できます。

医療費助成制度

進行性核状性まひと診断されたら保健所で必要書類を入手の上、書類を揃えて保健所等最寄りの受付期間に申請して下さい。

認定されると「特定医療費受給者証」が発行されます。

障害サービス

身体障碍者手帳を取得すると、補助具の給付(修理)、日常生活用具の給付・貸与等を利用できます。また、障碍者手当・見舞金制度・自動車利用援助制度、公営住宅優先入所・住宅整備援助制度、公共料金割引制度、税金減免制度等各種サービスを利用できます。

介護保険サービス

40歳以上の場合は介護保険サービスを利用することができます。

特定医療費受給者証について

主な必要書類

①特定医療費の支給認定申請書、診断書(臨床調査個人票)

②住民票、市町村民税(非)課税証明書などの課税状況を確認できる書類

③健康保険証の写しなど

医療費助成を申請から交付までの流れ

1.申請に必要な書類を揃えて区役所福祉課障害福祉係に申請します(名古屋市在住の方)。

2.都道府県・指定都市による審査を行い、(1)病状の程度が認定基準に該当するとき、または、(2)認定基準に該当しないが高額な医療の継続が必要な人(軽症高額該当)と認める場合に支給認定を行います。

3.都道府県・指定都市による医療受給者証の交付

(1)申請から医療受給者証が交付まで約3か月程度かかります。その間に指定医療機関においてかかった医療費は払戻し請求をすることができます。

(2)審査の結果、不認定となることがあります。その場合は、都道府県・指定都市から不認定通知が送付されます。

症状

40歳以降、平均60歳代で発症する。

最大の特徴は、初期からよく転ぶことである。

著明な姿勢の不安定さに加え、注意力や危険に対する認知力が低下するため、何度注意を促してもその場になると転倒を繰り返す。

バランスを失った時に上肢で防御するという反応が起きないため、顔面直撃による外傷を負うことが多い。

周囲に置いてあるものに手が伸び、つかもうとして、車椅子あるいはベッドから転落することがあり、長期にわたり介護上の大きな問題である。

注視麻痺は本症の特徴であるが、発症初期には認められないことが多い。

下方視の障害が特徴で、発症3年程度で出現し、その後水平方向も障害される。筋強剛は四肢よりも頚部や体幹に強い。

初期には頚部、四肢ともに全く筋強剛を認めず、むしろ筋トーヌスが低下していることがある。

初期には姿勢がよく、頚部から下はまっすぐである場合が多い。

一見無動にみえる患者が突然立ち上がったり、突発的な行動を起こすことがあるので注意が必要である。進行すると頚部が後屈する。

認知症を合併するが程度は軽く、見当識障害や記銘力障害はあっても軽い。

本疾患の認知症の本質は前頭葉の障害によるもので、把握反射、視覚性探索反応、模倣行動、使用行動などの前頭葉徴候が初期から出現する。動作の開始障害(無動、無言)、終了の障害(保続)などもよくみられる。

様々な言語障害を合併する。嚥下障害は中期以降に出現することが多いが、早期に嚥下障害がある場合は生命予後が不良である。

予後

ADL低下の進行は速く、我が国の剖検例の検討では車椅子が必要となるのに2~3年、臥床状態になるのに4~5年であった。

平均罹病期間は5~9年という報告が多い。参考までにであるが、パーキンソン病型や純粋無動症型は経過が緩徐で、罹病期間が10年以上であることも少なくない。

死因は肺炎、喀痰による窒息などが多い。

介護のポイント

先述の通り、本疾患は転倒リスクが非常に高いのが特徴です。そのため、転倒防止対策や転倒時に大事に至らないように工夫をしていくことが重要となってきます。

転倒を防ぐための介護のポイント

・排泄・入浴時は目を離さない:浴室では床が濡れていて滑りやすく、トイレでは排泄がすんだら立ち上がろうとして、バランスを崩す場合があります。できるだけ付き添うか、もしくは安全ベルトを装着しましょう。

・排泄はあらかじめ時間で誘導する:多くの方は排泄のパターン(起床・食前後・就寝時)があるので、それに合わせ、あらかじめトイレへ誘導することで転倒しないように付き添うことができます。

・声かけを念入りにする:姿勢が不安定であるにも関わらず、目につくものや気になるものがあるとそのまま行動に移してしまうような、周りの環境に依存的な部分があるため、トイレに行きたいときには必ず呼ぶというように、毎回声掛けを忘れずにすることが大切です。

・物は整理してひとつにまとめる:ものを落とした時に、拾うことに集中してしまい、頭から転倒する場合があります。リモコンなどは紐で結んでおき、気を引くものは見えない場所に片づけるようにしましょう。

・外傷を和らげる対策を取る:いつ、どのように転倒するかは全てを予測することはできませんが、前もって保護をしておくことで外傷を最小限に抑えることができます。家具の角には保護クッションをあて、転倒や受傷が頻回であれば、普段から保護帽の着用をします。ベッドからさくを乗り越えて転倒があれば、高さを一番低くして、衝撃を吸収するために床にマットを敷いておきしょう。

併診のすすめ

急激なADL低下を伴い、転倒リスクも非常に多いため一人での通院はもちろん、介助を伴う通院も大きな負担となります。

しかし、内服薬の調整などを考えると、これまで受診していた医療機関への通院を完全にストップすることも大きなリスクとなってしまいます。

こういったケースの場合は外来通院と訪問診療を併用する「併診」がおすすめです。

疾患に対するフォローを行うメインの医療機関の医師と転倒や誤嚥などの二次的な部分に対するフォローを行う訪問診療の医師の二名で住み分けし、それぞれが必要なフォローを行っていく形としていきます。

考えられるメリットとしては、「大学病院への通院頻度を少なくできる」、「転倒・誤嚥などの二次的なリスクに対して訪問看護等と連携してリアルタイムで予防のためのアクションを起こせる」、「転倒・誤嚥などが生じた際に緊急での駆け付け体制を作ることができる。」、「長く自宅で過ごしたいという希望に優位に働く」などが考えられます。

まとめ

最近では様々な神経難病の患者様にお会いする機会が増えてきています。

どういった制度が使えるのか、日々の生活で気を付けるべきポイントはどこなのかなど、再度ご確認いただき、寄りよい在宅生活を送れるようしっかりとサポートしていきたいですね。