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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

終末期の意思決定支援を考える

コラム2022/08/29

終末期の意思決定支援を考える

意思決定支援とは

意思決定支援とは、様々な事由で、自身の意思決定を自ら行うことが困難な人が、日常生活や社会生活等に関して自分自身がしたいと思う意思が反映された生活を送ることが可能となるように、その人を支援することやその仕組みをいいます。

ACP

終末期の意思決定支援では患者さん自身の意思(希望)が当然尊重されるべきです。

しかしながら、患者さんが自身の意思を明確に表すことができない場合もあります。その際は、代理決定として家族によって意思決定されることが多いですね。

昨今、耳にすることが多くなったadvanced care planning(ACP)は、その意思決定の方法の一つです。

ACPを因数分解すると、その構成因子はリビング・ウィル(生前意思表示。重病になり自分自身では判断ができなくなる場合に、どのような医学的ないしは法的判断をして欲しいかを説明しておく書類)と患者の意思決定能力が低下・消失した場合のsurrogate decision making(SDM)の二つであることがわかります。

参考資料

名古屋市在宅医療・介護のしおり

https://zaitakukaigo.nagoya/wp/wp-content/themes/ishikai2021/img/pdf/shiori2.pdf

リビング・ウィルの問題点

リビング・ウィルの問題点はいくつかあります。

まず第一に、意思表示を行う患者さんの多くは医療従事者ではないため、病気の自分を具体的に想像して具体的な対応方法を複雑にシミュレーションすることはほぼ不可能といえるでしょう。

また、その決定も、健康状態や周囲環境が変わるごとに変化していくことが当たり前であることも問題点としてよく指摘されます。

Surrogate decision making (SDM)の問題点

SDM(代理決定)においてもいくつかの問題点がありますが、一番の問題点は本人の意思よりも家族(代理人)の意思が優先されてしまうことでしょう。

また、家族の中でも意見が割れた場合、一体誰の決定を優先するのかなども問題です。

 終末期の意思決定支援を考える

以上のことを踏まえた上で、ACPを考える上で、リビング・ウィルとSDMの二つで完結させることは不十分であると言わざるを得ません。

そこで注目されているのが、ナラティブアプローチを含めた意思決定支援で、患者さんの人生を物語として捉える考え方です。

アプローチの方法として、「現在」、過去(これまでの物語)、未来(これからの物語)の3ステップに分けて、順番に進めていくことになります。

患者さん・家族さんが話すお話や想い(現在)、それを構成するに至った物語(過去)に関心を持ち理解する。そして、今後は自分たちも登場人物として関わる物語の話(未来)をともにする。

こうしたアプローチをすることで私たち自身も強い責任感と覚悟を持つことができ、形骸化しない意思決定支援を行うことができるのではないかと思います。

※個人の意見が含まれる内容となっております。

まとめ

今回は、終末期の意思決定支援の一つの考えとして皆様にお伝えしました。

意思決定支援は、様々な勉強会も開催されている非常に関心の高いテーマですね。

いずれ、いろいろな職種の方と意見交換やディスカッションをする場(リモートも含めて)を作りたいと思っていますので、ご意見ご希望のある方はぜひご一報ください!