コラム2022/02/28
メタボリックドミノをストップ!~特定健診と特定保健指導~
「最近メタボ気味だ…。」こんな言葉を聞くようになったのはいつ頃からだったか皆様覚えていますか?
いつの間にか当たり前のように聞くようになった「メタボ」という言葉。
1998年にWHOが『メタボリック症候群』という名称でその診断基準を発表した事により、「メタボ」としても一般に知られるようになりました。
日本では、40~74歳の2000万人以上、男性の2人に1人、女性では 5人に1人が「メタボ疑い」または「予備軍」にあたると推定されています。
今回は放っておくと命に関わる重大な病気に至る「メタボリックシンドローム」について、お話させていただきます。
メタボリックドミノ
掲載した図は慶應義塾大学医学部内科学 伊藤裕教授が提唱している「メタボリックドミノ」です。
この図は上流から下流に行くにつれて、必要な医療費が高くなることを表しています。
上流の段階で留まっていれば、医療費は年間数万円程度で済みますが、下流の透析まで悪化してしまうと、医療費は年間500万円を超えてしまいます。
効果はあるが目標未達のメタボ健診
日本では、2008年度に特定健診・特定保健指導制度をスタートする際に、厚生労働省が「メタボリックシンドローム」(内臓脂肪症候群)の啓発活動を推進しました。
2008年度には38.9%だった特定健診実施率は13年度には47.6%にまで上昇しましたが、当初の目標である70%には遠く及びませんでした。
特定保健指導の終了率も08年度の7.7%から13年度には17.7%にまで増加しましたが、こちらも目標の45%の約3分の1という状況でした。
しかしながら、目標達成とはならないまでもメタボリックシンドローム該当者および予備軍が08年度と比較して13年度は3.47%減少しています。
厚生労働省の「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」のワーキンググループが15年6月に発表した第三次中間まとめによると、特定保健指導の積極的支援、動機付け支援を終了した人では、3疾患関連(高血圧症、脂質異常症、糖尿病)の1人あたり入院外医療費に一定の適正化効果があると報告されています。
目標達成とはいかないまでも効果証明という点では十分な結果であったと言えます。
メタボ対策の最優先事項
厚生労働省が15年12月に発表した「2014年国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる者」の割合は、男性15.5%、女性9.9%であり、06年から見ると、男女ともに有意な変化は見られないのが実情です。
生活習慣病の中でも、とくに重症化すると長年に渡って医療費がかさむ糖尿病対策は、高齢化に伴ってますます重要になります。
15年7月に開催された第4回健康日本21(第二次)推進専門委員会では、健康日本21の第二次計画における各事項の進捗状況について発表がありました。
その発表によると、糖尿病に関する計画として次の4つが挙げられていました。
・合併症(糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数)の減少
・治療継続者の割合の増加
・血糖コントロール指標におけるコントロール不良者の割合の減少(HbA1cがJDS値8.0%以上の者の割合の減少)
・糖尿病有病者の増加の抑制
以上の4つのいずれも目標値との乖離が小さくないことがわかりました。
また、同委員会の委員が提出した「糖尿病についてのまとめ」では、次のようなことが指摘されています。
◆一次予防
・糖尿病が強く疑われる人、可能性を否定できない人は減少の傾向
・50歳代未満では内臓脂肪型肥満の影響が大きく、内臓脂肪を減らす取り組みが重要
・高齢者では肥満だけではなく、インスリン分泌量の低下、筋肉量の減少など、加齢による変化が糖尿病の発症、進展に影響を与える為、身体活動量の増加等のさらなる対策が必要である。
◆二次予防
・糖尿病と言われても治療を受けていない人がいまだ半数近く存在する
・血糖コントロールを改善するために、糖尿病予防活動・医療のさらなる向上、受診しやすい環境づくりなどの対策が必要である
◆三次予防
・透析の原因の第2位の糖尿病性腎症による新規導入は、近年増加が抑制される傾向があるが、引き続き注視が必要である。透析導入患者の高齢化がみられる。
まとめ
メタボリックドミノの図を見れば、メタボが生活習慣病を引き起こし、結果として、医療費を圧迫する原因となることがよくわかります。
生活習慣病は一人一人が、バランスの取れた食生活、適度な運動習慣を身に付けることにより予防可能です。
ご自身の健康状態を毎年確認し、健康づくりにつなげていくことが重要です。1年に一度、特定健診を受診し、生活習慣の改善が必要な方は、特定保健指導を受けましょう。