症例紹介 在宅医療2021/11/15
足を切らずに在宅生活継続を望まれる方への介入のケース
利用者/家族の状況
利用者: 73 歳 男性 ASO下肢壊死、左足壊疽、骨隨炎 要介護5
家族構成:妻(主介護者)と2人暮らし
訪問診療開始までの経過
2019/7/30右足趾切断、8/2右下腿、8/26右大腿切断(感染コントロール不能にて)。
左下肢重症虚血+踵部潰瘍+踵骨骨髄炎+足趾壊死
2020年10月頃から左足の状況が悪くなり、透析でかかっていた病院から紹介で大学病院でカテーテル治療を受けた際にアンプタを勧められたが、その時から本人は拒否をされていた。
説明は奥様も一緒に聞かれたとのことであった。
その頃、クリニックで透析を受けていたが、21/5/22より見当違いの発言が出現、21/5/25透析中も同様の症状があり、脳血管障害疑いと思われていた。
患者様は以前より左足壊疽に対して積極的治療や入院治療を拒否されており、透析クリニックからは21/5/25奥様と長女様に極めて危険な状態であると説明されていた。
最終的に患者様自身が自宅での療養を希望され、透析クリニックの相談員より当院に訪問診療の相談があり、介入に至った。
訪問診療開始後の経過
自宅では処置が必要であり、診察時に洗浄してユーパスタ処置をした。
左足の周囲軟部組織壊死して踵骨露出。第5足趾黒色壊死、足背も壊死部あり。
「アンプタ(切断)しないと感染がどんどん悪化していって予後数か月かもしれない。
治癒はしません。
急変することもある。
抗生剤も骨髄炎は治癒は見込めず、どんどん悪くなります。
アンプタすれば手術受けられればまだ感染をコントロールできる可能性もあります。」
と医師からお伝えした。
本人はもう一度年を越したいと言っていたが、それは難しいと話した。
本人に写真を見せもう一度手術について考えてもらうよう話した。
その後、透析中に痛みの訴えが有り、本人が「こんなに痛いなら切ったほうがいい」と話されたため、急遽入院、左の膝下切断の運びとなった。
退院後、ご自宅に訪問診療に伺ったが、本人からの痛みの訴えもなく、傷はきれいな状態で、抜糸も一部で、感染徴候は認められなかった。
離解しているが傷口はきれいな印象であったため、水道水で洗浄してゲンタシン軟膏処置を施した。
退院から3カ月、アンプタ部位もきれいになり、本人も痛みの訴えがなくなったことから精神的に落ち着くようになってきた。
手術を行った病院からも「もう大丈夫ですね」と太鼓判を押されたこともあり、訪問診療終了に至った。
結果
本人の希望であった年を越すことは叶えられた
時には厳しく、しっかりと話をしなければいけないというケースであった
事例から学ぶ大切なポイント
本人の意向を叶えてあげたいと願うのは誰しも当然であるが、できることできないこともあるのが現実である。
そのため、優先順位も踏まえ、そのためには何をしなければいけないかをしっかり話し合えることが重要である。
ちくさ病院 総合内科医