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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

「10年間で認知症10%減は可能!?」政府が発表した認知症対策新大綱案を解説

コラム2019/06/03

「10年間で認知症10%減は可能!?」政府が発表した認知症対策新大綱案を解説

10年間で認知症10%減は可能!?」政府が発表した認知症対策新大綱案を解説

日本では高齢化社会がますます進み、認知症に罹患する人の数も増えてきています。

厚生労働省は2018年時点で、高齢者の7人に1人の割合で認知症に罹患していると公表。

認知症対策が急務となっている昨今、政府は2019年5月16日に認知症対策の新大綱案を発表しました。今回は賛否両論がある新大綱の中身と、認知症に関わる在宅医療について紹介します。

■認知症10年間で10%減を目標とする新大綱案

新大綱案のポイントは全部で2つ。「予防」と「共生」です。
予防では「70代での認知症発症を10年間で1歳遅らせる」や「70代の認知症患者を10%減らす」、「発症や発症後の進行を遅らせる」などといった内容が盛り込まれました。
共生では「バリアフリーの実現」や「発症後も自分らしく生活できる社会の実現」などです。
新たに予防の観点が盛り込まれたことがポイントですが、認知症はまだ科学的な原因や治療法が確立されていない疾患。
科学的根拠がはっきりしない中で数値目標だけが一人歩きし、予防を怠ったという自己責任論につながるという否定的な意見もあげられています。

一方で共生の部分ではスポーツ教室や講座の拡充など、認知症を発症しても自分らしく生き生きと生活できる環境作りに力を入れようとしていることが分かります。
認知症には早期診断と早期治療が必要ですが、これまでの生活を継続できるような地域での取り組みが重要です。

■認知症と在宅医療

認知症に罹患すると、在宅生活ができなくなると考えている人は少なくありません。
しかし実際には認知症に罹患してからも在宅医療や介護サービスを利用しながら、これまで同様の在宅生活を続けている人もいます。
認知症患者の中には何らかの合併症があり、その合併症が原因で亡くなっている人もいます。適切な受診や治療を受けることが困難なことが多いため、在宅医療を通して認知症と合併症のトータル管理が必要です。

また、在宅の認知症診療においては家族はもちろんのこと、介護サービスとの連携は欠かすことができません。新たに生じる患者や家族の問題を適切に分析して、医療と福祉の両面から迅速に対応することが求められます。

2019年5月16日に政府が発表した認知症対策の新大綱案では、これまでの共生にプラスして予防の観点が取り込まれました。
認知症を発症してもこれまでと変わらない自分らしい生活を継続することができるように、在宅医療や介護サービスを含めた地域での取り組みがこれまで以上に必要となってくるでしょう。