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医療法人豊隆会ちくさ病院在宅医療

「ヒポクラテスの誓い」から考えるACP(人生会議)の重要性

コラム2021/10/18

「ヒポクラテスの誓い」から考えるACP(人生会議)の重要性

紀元前に生まれたギリシャの医師であり哲学者のヒポクラテスが残したとされる「ヒポクラテスの誓い」は、今もその価値を失いませんが、時代の変遷とともに、それに対する評価は大きく変わってきています。

今回は「ヒポクラテスの誓い」を紐解きながら、ACPの重要性について触れていきたいと思います。

ヒポクラテスの誓いとは

古代ギリシアで作られた、医師の倫理・任務などについてのギリシア神への宣誓文です。

内容を要約すれば、金銭的報酬だけを目的に医療を施したり医学を教えたりすることはせず、人命を尊重して、患者のための医療を施しましょう。患者等の秘密を守る義務を守りましょう、という内容が書かれています。

「ヒポクラテスの誓い」は次のようなものです(参照:ウィキペディア)

  • 医の神アポロン、アスクレピオス、ヒギエイア、パナケイア、及び全ての神々よ
  • 私自身の能力と判断に従って、この誓約を守ることを誓う
  • この医術を教えてくれた師を実の親のように敬い、自らの財産を分け与えて、必要ある時には助ける。
  • 師の子孫を自身の兄弟のように見て彼らが学ばんとすれば報酬なしにこの術を教える
  • 著作や講義その他あらゆる方法で、医術の知識を師や自らの息子、また、医の規則に則って誓約で結ばれている弟子達に分かち与え、それ以外の誰にも与えない
  • 自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない
  • 依頼されても人を殺す薬を与えない
  • 同様に婦人を流産させる道具を与えない
  • 生涯を純粋と神聖を貫き、医術を行う
  • 膀胱結石に截石術を施行はせず、それを生業とする者に委せる
  • どんな家を訪れる時もそこの自由人と奴隷の相違を問わず、不正を犯すことなく、医術を行う
  • 医に関するか否かに関わらず、他人の生活についての秘密を遵守する
  • この誓いを守り続ける限り、私は人生と医術とを享受し、全ての人から尊敬されるであろう!しかし、万が一、この誓いを破る時、私はその反対の運命を賜るだろう。

「ヒポクラテスの誓い」パターナリズムの問題点

約2000年以上も前にこのような医療に対する真摯な職業倫理を打ち立てたことは高く評価されており、医療の本質は大きく変わらないともいえます。

一方で、個人の自己決定が重視される現代の医療では、「知識の非公開性」、「医師の徒弟制度を前提にした閉鎖性」、「専門家の優位性」の観点から、現代の医療にそぐわない面があるとの指摘もあります。

つまり、医師の専門家としての判断に無条件に従えばよい、というパターナリズムに対する批判でもあります。

患者さんの自己決定権を高めるためにはどうしたらよいのか

判断に無条件に従う背景には、「従うしかない」現状、つまり情報の非対称性があります。

例えば、インフォームド・コンセントを、単に機械的に説明し、同意書にサインしていただくことは、医療訴訟を防ぐ防衛手段としては有効であっても、患者さんの自己決定や理解を深めるためには充分ではありません。

もっとも患者さんが主体性をもってインフォームド・コンセントを実施するためには、医師と患者さん間の医療に関する知識格差、患者さんの十分な理解力、十分な実施時間と裏付ける加算などがなければ、十分な機会にはならないでしょう。

また、未成年患者や少数言語を使う民族、認知症など意思疎通ができない人、精神障害者、救急患者、末期のがん患者さんなどでインフォームド・コンセントの実施が困難な場合もあります。

話が少しそれますが、宗教上の理由から輸血を拒否する人たちに対して、救命するために輸血した医師に対して損害賠償が認められてもいます。

明らかに生命を損なうと分っている治療方針を患者さんが選ぶ場合、医療者として判断に苦しむ場面や目の前で死に瀕している患者さんの命がみすみす失われていく姿を傍観しなければならないとしたら、例え最高裁の判断に沿うものだとしても、医療者の本能に著しく背く行為だと言わざるを得ないのではないでしょうか。

最高裁、患者の自己決定権を尊重-エホバの証人輸血事件で患者勝訴-

話を戻すと情報の非対称を埋めるためには、知識格差、十分な理解と実施時間が必要です。それらを改善し患者さんの自己決定を促す取組として、ACPの推進が挙げられます。

ACP(人生会議)は

将来の人生をどのように生活をして、どのような医療や介護を受けて最期を迎えるかを計画して、ご自身の考えを心づもりとしてご家族や近しい人、医療やケアの担当者とあらかじめ表しておく取り組みをアドバンス・ケア・プランニング(ACP)といいます。

愛称として「人生会議」と呼びます。

環境や体調の変化により、繰り返して話し合いを行うプロセスでもあります。

人生会議 ACPはご家族や医療やケアの担当者と話し合って確認するという行為が大事な点です。

今後の人生をどのように過ごして、どのような医療やケアを受けたいかをご家族や専門職との話し合いの中で決めて記録に残しています。

厚生労働省のHPに人生会議について学べる学習サイトがあります。一度、取り組まれてみてはいかがでしょうか。

ゼロからはじめる人生会議「もしものとき」について話し合おう 厚生労働省hp

まとめ

下記に患者さまとご家族さまが意思決定(意思の推定)をしていく過程で医療・介護従事者がどのように支援したのかを事例集としてまとめられています。

在宅医療・介護の現場で、在宅看取りの経験豊富なエキスパートの方々のコラムも掲載しており、医療・介護現場の方々にとっても役立つと思いますので、ご参考にしていただければ幸いです。

人生の最終段階における意思決定支援事例集

また、また、NPO団体がACP(人生会議)ファシリテーター養成研修を実施しています。

ご興味ある方は参加してみてはいかがでしょうか。

医療福祉サービス事業者サポート機構 ACPファシリテーター養成研修