在宅医療の基礎知識2021/08/09
②パーキンソン病とパーキンソニズムの違い
“パーキンソン病”、“パーキンソニズム”、“パーキンソン症候群”…。
皆様も一度は関わったことのあるワードの一つではないでしょうか。
それぞれのワードは、全て意味が全く違いますが、それぞれの違いをきちんと説明できるでしょうか。
今回は、「パーキンソン」にまつわる似通ったワードの違いについて解説いたします。
パーキンソニズムとは
パーキンソン病の運動症状では、動作が遅くなる(動作緩慢、無動・寡動)ことが最も重要な症状で、これに加えて手足や体感がこわばる(筋強剛)、手足がふるえる(振戦)、倒れやすくなる(姿勢保持障害)のうちいずれか一つの運動症状があれば、パーキンソン病の疑いがあると診断されます。
これらの症状をパーキンソニズムまたはパーキンソン症状といいます。
パーキンソニズムを引き起こす病気はパーキンソン病以外にもたくさんあり、治療法や対応法も病気によって違いがあります。
そのため、それぞれの病気に適した治療をするために、正確に診断することがとても大切です。
パーキンソニズムを起こす病気について
パーキンソニズムを起こす病気は、パーキンソン病の他の神経変性疾患では、多系統萎縮症(MSA)、進行性核状性麻痺、大脳皮質基底核変性症などがあります(ここで挙げた疾患は特定疾患に認定されています)。
パーキンソン症候群には、薬剤性パーキンソニズム、脳血管性パーキンソニズム、正常圧水頭症などがあります。
このほかインフルエンザ脳症の後遺症や練炭などの一酸化中毒の後遺症などで現れることもあります。
神経変性疾患とパーキンソン症候群について
神経変性疾患とパーキンソン症候群についてもう少し詳しくみてみましょう。
■神経変性疾患
脳神経が何らかの原因で抜け落ちる、パーキンソン病とよく似た病気。初期にはパーキンソン病との区別が難しいことがある。
・多系統萎縮症
病気の初期から排尿障害などの自律神経の乱れ(自律神経症状)が現れ、飲み込みが悪くなったり、睡眠中のいびきや無呼吸が目立ったりします。
・進行性核上性麻痺
目の動きが悪くなる、すくみ足などの症状がみられ、病気の初期から転びやすくなるなどが現れます。
・大脳皮質基底核変性症
ある特定の動作ができない、言葉の扱いがむずかしくなる、片側の空間にあるものを認識しない、片手が勝手に動く、認知症などの症状も見られます。
■パーキンソン症候群
・薬剤性パーキンソン症候群
服用した薬の副作用として起こるもの。抗精神病薬などで生じやすいが、一般的に使われる制吐薬や抗うつ薬で起こることもあります。
薬の減少や中止で症状は改善します。
・脳血管性パーキンソニズム
小さな脳梗塞が多発した場合、運動機能が障害され、パーキンソン病とよく似た症状が現れることがあります。
脳血管障害の再発予防を目的とした薬物療法と、血圧や血糖値などのコントロールが治療の中心になります。
・正常圧水頭症
頭蓋の中を満たしている髄液の流れが滞り、脳を圧迫することで起こりま。歩行障害、尿失禁、認知機能障害が代表的な症状。手術で症状の改善が期待できます。
パーキンソン病とそれ以外の病気の区別
先に挙げた多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症はパーキンソニズムを起こす病気の中でも、パーキンソン病との区別が難しい病気となっています。
初期段階での区別は特に困難となり、はっきりと区別するまでに長時間を要する場合があります。
一方で、これら3つの病気以外は、MRIなどの画像検査や患者さんから病歴を聞くことで区別することが可能です。
また、次のような場合はパーキンソン病以外の可能性があります。“症状が左右対称に出る”、“進行が早く、早期から転倒する”、“パーキンソン病治療薬(主にL-ドパ)の効きが悪い”など。
このように、パーキンソン病の診断は問診と診察を中心に行いますが、その判定は神経内科の専門医でも難しいケースがあります。
そのため、診断をより確実なものにするために複数の検査結果を参考にします。
■主な検査の例
・MRI脳画像検査
・脳血流スペクト検査
・MIBG心筋シンチグラフィ
・ドパミントランスポーターシンチグラフィ
・嗅覚検査
まとめ
パーキンソンにまつわるワードのそれぞれの意味の違いを理解し、パーキンソニズムの原因が何なのかを把握することがとても重要ですね。
パーキンソン病は神経難病の中でも最も研究が進んでいる疾患と言われていますが、未だに多くの人々を苦しめている病気です。
現段階では「治癒」よりも「症状緩和」を目指すことが治療の目標となっています。
パーキンソン病という難病を抱えた方々が少しでも自分らしい生活を続けていけるよう私たちが力を合わせてサポートしていくことが大切です。